くろねこライフ...9「…あはは」蔵馬は、苦笑いをして、俺の問いには答えない。 なんだ? なんなんだ?どうして答えない? クシュ、と今度は俺がくしゃみをした。 もう水を浴びるような季節ではない。すっかり体が冷たくなってしまった。 「とにかく…温まろう、飛影」 これじゃあ二人して本当に風邪引いちゃう。 蔵馬は窓辺に並んだ瓶の一つを取り、湯の中に垂らす。お湯を足すと、バスタブの中はいい匂いの泡でいっぱいになった。 俺は抱き上げられ、みるみる泡立った湯の中に降ろされる。 「俺も一緒に入らしてもらうね」 濡れた服を、脱ぎにくそうにして蔵馬は脱ぐ。 なんだか、見てはいけないような気がして、俺は思わず反対側、窓の外を見る。 「よ、っと」 脱いだ服は脱衣所に投げ、ざばりと音を立て、蔵馬がバスタブに入ってきた。 お湯が溢れ、俺の方へ波のように押し寄せた。 「肩まで、ちゃんとつかって」 長い腕が、俺の肩をそっと押し、湯につからせる。 向かい合って、あたたまる。 泡立つ湯のおかげで、お互いの体はほとんど見えないが、なんだか気恥ずかしい。 恥ずかしいのは、さっきまでされていたことのせいなのか、それとも… 「…どうして、お前のは触らなくても大きくなるんだ?」 不透明な湯の中で、蔵馬のそれは見えないが、さっきは確かに大きく盛り上がっていた。濡れた布を押し上げる、しっかりとした肉の感触を手が覚えている。 「どうしてって…その…」 飛影、が、ああなるのを、見てたから。 言いにくそうに蔵馬は言う。 「俺を見てたから?」 「…そう」 俺にはさっぱり意味がわからない。 なんだかイライラしてきた。 「はっきり言え!」 無言のままの、蔵馬の手が、俺の頬に添えられる。 そのまま、蔵馬の顔が近付いてきて… 唇が、重なった。 蔵馬の指が、俺の髪をかき上げ、耳を撫で、頭を引き寄せる。 重ねたままの唇を割り、蔵馬の舌が俺の口の中に… 「…んんっ!」 ぬるりと、口の中を自分のものではない舌が這い回る。 背筋がぞくっとする。 不快に感じていいはずなのに、なぜか止める気にはならなかった。 「ん…みゅぅ……」 ちゅぱっ、という濡れた音を立てて、唇が離される。 鼻でだって息はできたはずなのに、俺はハアハアと息を乱して喘ぐ。 「つまり…こういうこと」 「こういうこと…?」 「俺は、飛影、君が好きだよ」 「…知ってるぞ?」 ネコが好きだから、飼ったに決まっている。 何を言っているのだろうか、こいつは。 ネコを飼うためにわざわざ家を買うような酔狂なやつはそうそういない。よっぽどネコ好きなのだろう。 「そうじゃないよ…特別な意味で、君が好き」 特別な意味で、俺が好き? 蔵馬の、まるで女のように見える長い濡れ髪は艶やかで、その綺麗な顔に、俺の下肢が、ドクンと疼く。 「だから…あんな意地悪しちゃった」 蔵馬の手で、散々弄られたことを思い出し、カアッと顔が熱くなる。 「俺が…あんなことをしているのを…見たいのか?」 変態か、こいつ。 俺は死ぬほど恥ずかしかったってのに。 それを見て、気持ちよくなれるなんて。 「見たいよ。そして…」 できれば、一緒に気持ち良くなりたいな。 「…一緒、に…?」 「こんなのは…どう?」 「…にゃっ?」 お湯の中で、向かい合わせのまま、抱き上げられる。 不透明な湯の中で、蔵馬の手が、俺の股間を探った。 「ん…ぁ」 「もっと、俺にくっついて…」 …俺の腹に、何か硬いものが触れる。 なんだ、これ…? おそるおそる手で触れたそれに驚き、俺は慌てて手を引っ込めた。 でかい。 でかくて、硬い…蔵馬の… 「あ!うにゃあっ!!」 蔵馬のやつ、俺のと自分のを、くっつけるように一緒に握りやがった! 「な、何を、あっあっ、みゅうっ!」 「飛影…気持ちいい?」 硬くなった二本を、蔵馬は押し付け合うようにして、一緒にしごく。 俺のよりもずいぶん大きい蔵馬のそれが、俺のそれにゴリゴリと擦り付けられる。 「にゃんっ!あっ!あっ!」 硬くて、大きくて、熱いもの。 二本は蔵馬の手の中で、揉み込むように擦り付けるように、激しく動かされる。 「う、あ、…やめ…っ…にゃあっ!!」 「もう、出ちゃう?」 根元からぐいっと揉まれ、先端をカリッと引っ掻かれ… もう、無理…! 「みゃっ!うにゃあぁっ!!」 だくっ、と吹き出した液は、湯の中ではわからない。 「あ、あああ、んにゃ…」 まだ、止まらない。 蔵馬の手は、まるで中身を全部搾り出そうとしているかのように、ぐいっとしごく。 「あ、はあっ…んん…」 腰が、尻が、下腹部が、ぶるぶると波打つ。 こんなにたくさん出たのは初めてだ。 蔵馬も小さく息を荒げ、またもや俺の顔を引き寄せ、唇を重ねる。 「ん、あん…みゅうん…」 嫌じゃない。 さっきはザワザワしたその行為が、今はなんだか… なんだか…気持ちいい。 舌を絡め、互いの口の中を味わう。 お湯につかったままの体は熱くて、フラフラしてきた。 「…タイムアップ」 これ以上ここでしたら、二人でのぼせてひっくり返っちゃうよ。 蔵馬はそう苦笑する。 「みゅぅ…」 もう終わりなのだろうか。 まだ、終わらせたくない。 もう一回ぐらい、したい… 「もっと、したい?」 「……したい…」 自分でも、何を言っているのか分からないのは、すっかりのぼせたからだろうか。 頭の中が、唇や下腹や、汚いものを吹き出させるあそこが、 もっとこの不思議な行為を続けたいと要求している。 「くら…っにゃ!」 急にバスタブから立ち上った蔵馬に、抱きかかえられる。 視界がぐらりと回る。 「のぼせちゃったでしょ?」 ぬるめのシャワーで自分と俺の体についた泡を洗い流し、バスタオルを取る。 「…くら…」 「本当はね…」 こういうことは、ベッドでするものなんだよ。 だから、 「続きはベッドで…ね?」 ***
しっぽがゆらゆらしているのは、自分でもわかった。かろうじて体だけは拭いて出てきたが、俺たちは二人とも濡れた髪をして…ついでに俺は耳としっぽも濡れている…ベッドの上にいた。 まだ水分を含んでいるしっぽは重いのに、頬に、耳に、まぶたに、唇に、蔵馬の指や唇が這うたびに、俺のしっぽは揺れる。 秋も終わりに近づいた今、暖房を付けてなかったベッドルームは少し寒いくらいだったが、風呂ですっかりのぼせた俺には、シーツの冷たさが心地いい。 積み上げた枕に背を預けた俺の体を探る、指先、手の平。 「……にゃあ…」 首筋に唇が這い、強く吸われる。 ブルッと耳が震えた。 「……これ、が…続きなのか…?」 「そうだよ。でも…まだまだ先は長いからね」 先は長い? また…あそこを弄るのだろうか? 蔵馬のと一緒に握られた感触を思い出し、顔が熱くなる。 「…今度は…違うよ」 こいつは、俺の考えていることがわかるのだろうか? 「足、広げて…」 関節が軋むほど、両足を広げられた。 ベッドの側のオレンジ色の照明に照らされた俺の両足の間に… 「おいっ!な、何して…!」 俺の足の間に顔を埋め、くちゃ、と音を立てて、蔵馬はそれを口に銜えた。 「……っ!にゃあぁ!!」 温かい。 柔らかくて、でも弾力のある舌が、根元から先端の穴まで、べろりと舐めた。 「な、何してるっ!やめっ!!…にゃっ…」 舐める…なんて! どういうつもりなんだこいつは!! 風呂に入ったばかりだとはいえ、そこは排泄をするための器官だ。 「んん…うにゃっ…」 蔵馬の両手は俺の両足をがっちり押さえ付け、広げる。 足を閉じようとするたびに、それを咎めるかのように、蔵馬の歯が口の中のものを軽く噛む。 「ああっ!にゃああ!」 薄い皮膚を引っ張るかのように、先端に歯を立てられた。 「にゃあっ!うにゃああぁあ!!」 蔵馬の口の中で、膨れ上がったそれはあっという間に弾ける。 まるで電流でも流されたかのように、尻が何度も跳ねた。 「あっあっ…あ、みゅうん…っ」 無意識に、蔵馬の長い髪を俺はつかんでいた。 何かにすがりついていないと、頭がおかしくなりそうだったから。 「あ、は…んにゃ……」 「…美味しいよ」 美味しい!? 何が… いつの間にか閉じていた目を開いた途端、あり得ない光景が目に飛び込む。 ごくり、と蔵馬が飲み下した、その液体… 「バ、バカッ!! 何を…」 飲み込んだ! 俺が出したものを!この変態…! 「美味いわけないだろうが!! この…ん…」 また、唇を重ねられる。 潜り込んできた蔵馬の舌はヌメッとしていて、その理由に気付いた俺は吐き気を催した。 「っうぇ、あ…汚い…やめ…!」 「汚くなんかないけど。でも嫌いな味なら、俺だけが味わうことにするよ」 クスクス笑いながら、蔵馬は俺の顎を伝って落ちたドロリとした液を綺麗に舐めとる。 俺はまだ肩で息をし、蔵馬を睨む。 「気持ちいいでしょ?…手でするより」 頭が…クラクラするのはまだのぼせているということだろうか? 手でするのとは…全然違う。 すごく… …気持ちいい。 「さて。もっとできそう?もう出ない?」 腹が立つ。 余裕綽々の、その言葉。 その笑顔。 「まだ出るかなー?」 「うあっ!にゃあああんっ」 指で、先端をピンと弾かれた。 その痛みと刺激に、俺はまたクッションにぽふっと背中から倒れ込む。 「痛っ!バカヤロ…」 「痛い?じゃあ、続きは止めようか?」 続き? 俺はきょとんとする。 もうしたじゃないか。 まだ、これに続きがあるのか? 「まだ続きがあるのか…?」 「……そうだね」 でも、飛影にはまだ早いかな。 怖がって泣いちゃったらかわいそうだし。 片頬で笑って言われたその言葉に、カチンときた。 「…誰が怖がるって…?」 「飛影が、だよ。多分泣くと思う」 生まれてこの方、鳴いたことはあっても、泣いたことなどない。 馬鹿にしやがって…。 「泣くだと?ふざけるな」 「へえ…?じゃあ、続けようか?」 「…望むところだ」 三十分後、俺は自分の言葉を猛烈に後悔することになる。 ***
ベッドの上で一瞬見つめ合う。蔵馬の瞳が、笑みに細くなる。 「…もう一度、足を広げて」 知らないうちに、俺はぎゅっと足を閉じていた。 そろそろと、ほんの少しだけ、足を開く。 「わかってないな」 「にゃあっ!」 両足を引っ張られ、ぐいっと曲げられる。 膝が肩につくほどの大股開き。 仰向けに倒れ込んだその姿勢では、尻の穴まで丸見えだ。 他人にこんな所を晒すなど、みっともないにも程がある。 「ひっ…あ!」 尻の穴に、ふうっと息が吹きかけられる。 外気に触れたことなどないそこが、ヒクッと締まる。 「な、にして…」 「できるだけ、痛くないようにするから」 「…にゃ…?」 ベッドの側の、小さなサイドテーブル。 下は、三段の引き出しがある、木のテーブルだ。 俺の足を押さえつけたまま、真ん中の引き出しから、蔵馬は小さな瓶を出す。 中身は透明で、水のように見えた。 「じっとしてて…」 「うあ!うにゃっ!」 パチンと開いた瓶の口から、俺の尻に何かがかけられる。 それは水ではなく、なんの匂いもしない、ぬるぬるした液体だ。 「冷た…っ何を…うあっ!!」 蔵馬の手の平で、肛門周辺に冷たくぬるぬるしたものが塗り広げられる。 「なんだ…これ…っ!」 「飛影のかわいいお尻がなるべく痛くならないようにね」 尻? 痛くなる? 「何をするんだ…?」 「ここに…」 「んんっ!みゅっ!」 尻の穴を、蔵馬の指がつつく。 「ここにね、俺のを、入れるんだよ」 「にゃあっ!?」 ここに? 入れる? 「…バ、バカか!無理だ!!」 「やっぱり、怖い?でも…もう、遅いよ」 蔵馬の人さし指が、穴の上をなぞるように、いったりきたりする。 「あっ…あん…んん…ああっ!!」 くちゅ、という音を立て、蔵馬が指をゆっくりと押し込み始める。 「あ!あ!にゃあああん!!うあ、あ!」 窄まろうとするそこを広げて、蔵馬の指は根元まで入ってしまう。 「痛っ、あ、痛い…っ」 「これだけぬるぬるにしたんだから指一本くらい痛くないはずだよ。力を抜いてごらん」 異物が挟まっているその感触に、力を抜くことなどできない。 整わない呼吸に喘ぐ間に、指が抜かれ… 「うにゃああ!」 入ってくる。出ていく。 入ってくる。出ていく。 「っあ!にゃあー!」 指が何度も抜き差しされ、尻からジュプジュプと音がする。 「嫌、だ!やめ!! うあ!痛いっ!にゃあああっ」 「もう一本、入れるよ…」 「アアアアアッ、痛う!うにゃっ!!」 指が二本になった。 ぐちゅんぐちゅんと音を立てながら、激しく行き来する蔵馬の指に、俺の穴はどんどん広げられていく。 痛い。尻の穴が裂けそうだ。 …怖い。 気持ちが悪くなってきた。 「く、らま…」 気持ちが悪い、と訴えてみる。 怖い、なんて絶対に言いたくない。 「飛影、いい子だね。俺の言う通りにして…」 息を吸って、吐いて。 ここも触ってあげるからね。ほら、気持ちいいでしょう? 前にも、蔵馬の手が絡みつく。 ぬるぬるした液体をまとった手でしごかれ、思わず腰が揺れる。 「あ…にゃぁぁ…」 狭い穴を広げられる痛みを、一瞬忘れられる。 気持ち、いい…。 もっと… 「んぐっ…ふにゃあ…」 力が、抜ける。 同時に、三本に増やされた指が、ぐうっと押し込まれる。 ぐるっと掻き回すように、中が開かれる。 「うっぐ!痛うっ…」 「抜くよ…」 「う、あ、うにゃあああ!」 じゅぽっ、と栓を抜くような音を立て、指が抜かれる。 「あ、は、うあ…」 指が抜かれたそこは、すうすうとした冷たい空気を感じて震える。 体の中に、外気の冷たさを感じる。 「ふ…にゃん…ン…?」 熱い。 尻の穴に押し付けられているものがなんなのかは、見なくてもわかる。 怖い。 抱えられた両足が、がくがく震えるのが止められない。 やっぱり、入れ…るのか…? 「飛影、入れるよ…」 ギュッと目を閉じる。 次の瞬間、目の前が真っ白に弾けた。 ***
「ニャアアアアッ!! アア!ウアアア!」ぶわっと目の前を滲ませたのが自分の涙だと、しばらく理解できなかった。 「ニャアアッ!! ニャアッ!!」 内臓を無理やり押し広げ、蔵馬が侵入してくる。 痛い!痛い痛い! 嫌だ!やめてくれ…! 「もうちょっとだから、頑張って…」 「アアア!ニャアアーッ!!」 ガリッと蔵馬の背中を引っかく。 深い爪痕からはたちまち血が溢れ出したが、血なら俺だってとっくに流している。 尻の中心から、紛れもない血のにおいがする。 裂かれたケツは、押し込まれる衝撃にビクンビクン跳ねていた。 「くらっ!あ!みゅううううん!! アアッ!」 一際ひどい痛みに、気を失いそうになった。 「あ、はあっ…く」 …自分の尻に、蔵馬の体が密着している。 それは、つまり… 「全部…入ったよ」 「……あ」 自分の体内で、脈打つ熱い棒。 あの長くて太いものが、全部俺の中に…? 「動いていい?」 「…いや、だ……うにゃっ!」 嫌だと言ったのに! 太い棒が、グッと奥を突く。 「ニャアアアア!」 抜けそうになるぎりぎりまで引き、それを一気に押し込まれる。 「ウニャアアッ!!」 …俺の内臓も、一緒に動いている。 口や尻の穴から、内臓が飛び出してくるんじゃないかと思うような圧迫感。 本当に、ひどい圧迫感。 「ニャアッ!ニャアッ!ミュウン!!」 いつの間にか、俺は突かれるリズムに合わせて大声で鳴いていた。 おまけに、目からは涙がぼろぼろ零れる。 ひえい、と名を呼ばれて、泣き濡れた目をどうにか開く。 汗を浮かべた、蔵馬。 ピンと攣っていたしっぽをやさしく撫でられ、耳を舐められる。 「…っ、にゃあ…」 「怖がらないで。後は気持ちいいだけだから」 疑いの眼差しで見た俺に笑いかけると、蔵馬はおかしなことを囁いた。 愛してる、と。 その意味を考える間もなく、また直腸をズンズン突かれる。その律動は、腹の中を掻き回す。腹の中に、穴が開くんじゃないだろうかと思うほどだ。 「ニャアッ…ニャアッ!! ニャアッ!!」 声を上げ、泣き叫んだのは、痛みのせいだけではない。 尻の穴の、その奥に、突かれると気が狂いそうになる場所があるのだ。 気持ち、いい。 良すぎて、怖いくらい、に…穴の奥、の…。 その証拠に、俺は自分の腹の上に、もう何度も精液を吹き出させていた。 「も、うっ出ない…くら……みゅうん…」 「じゃあ、一緒に…ね」 蔵馬の指で握りしめられたそこが、最後の一滴までを出し尽くすと同時に、俺の腹の中に、熱いものが、どぷっと広がる。 「んにゃ…」 どくどく、どくどく、流し込まれる。 腹の中に納まりきらなくて、穴から流れ出し、尻を濡らす。 「みゅうぅ…」 「飛影…」 好きだよ。 遠のく意識に実をゆだねる寸前、聞こえた言葉はそれだった。 俺に突き刺さっていたものがずるりと抜き出されるのも待たず、俺は眠りに落ちる。 翌朝、96日目の朝は後悔どころの騒ぎではなくなるのだが。 |