強き者...4
「ん、あ…う……」
はあはあと、切なげな呼吸が部屋に響く。
息が切れる。
ひどく、疲れる。
蔵馬の指や唇に体中を愛撫されている、まだ前戯の段階だというのに、飛影はすでにぐったりと体を預けていた。
まるで黒龍波を打った後のように、全身がだるく、眠くてたまらない。
眠りに落ちそうになるとや、体のそこここに与えられる快感に、飛影はビクッと目を覚ます。
「アッアッ、ん…」
「寝るなよ」
「…………ん…は…」
「上はまだいいが、下はキツイぜ。オレは大人しく待ってやろうと思ったのに、お前が荒療治を希望したんだからな」
荒療治、が何を意味するのかは飛影にもわかってはいた。
だが、あまりにも眠い。だるい。
飛影としては、やっぱりやめた、寝る。と言いたい所だが、それは蔵馬が聞き入れないだろう。
肌の上をさらさらと滑る蔵馬の銀髪が、首筋や胸元を掠め、くすぐったい。
「う、あっ、ああっ」
乳首の薄い皮膚に爪を立てられ、一瞬眠気が吹き飛ぶ。
カリ、と小さく音を立て、狐の長い爪は赤い粒を引っかく。
「あ!うあ、ん!」
「…寝たら噛み千切るぞ」
「な、やめ、この…!」
冗談だとわかってはいても、ピンと尖った乳首を甘噛みするその蔵馬の歯に、飛影は体を竦ませる。
「んあ……ひ、あ……アアッ!!」
「…飛影」
舐めろ、と短く命じる蔵馬に、飛影は嫌だという意に、力なく首を振った。
「わがままなやつだな…」
「ア、ん…っひ」
「足、しっかり閉じてろよ」
軽々と飛影の体を抱き上げ、閉じられた白い腿の間に、蔵馬は自分の陰茎を挟む。
「あっ…う、あ、あ…」
体を、前後に揺さぶられる。
ぎゅっと閉じた自分の腿の間でみるみる硬くなっていくものを感じながら、くぐもった声を漏らす飛影の頭を、大きな手がぐっとつかんだ。
「飲め」
「…ん、ぐうっ!」
すっかり勃ち上がった蔵馬の股間に顔を押し付けられ、口に押し込まれたものは、飛影の小さな口には納まりきらない。
「んん!ぐ、んう!」
「銜えなくていい、口を付けて、飲め」
「う、んん!んー!! んんっ!」
先端が大きく膨らんだ次の瞬間、飛影の口の中に熱い液体がごぷっと注がれる。
「んん!ん、う」
「吐き出すなよ。全部飲み込め」
「ん…ぅ」
吐き気に上下する胸元を押さえ、ごくり、と湿った音を立て、飛影は生ぬるく嫌な味のする液体をなんとか飲み下した。
「う、あ、げほっ…っは……あ」
妖怪の精は、力の源であり、あらゆる治療薬でもある。それが強い妖力を持つ者の精であればなおさらだ。
蔵馬の精は飛影の爛れた体内に流れ、染み込み、たちまち痛みを和らげた。
「あ……ふ…」
強い酒を飲んだ時のように、胸がカアッと熱くなるのと同時に、嫌な痛みを訴えていた胸や胃が、すうっと軽くなる。
虫が巣くった傷口に、精はドロリと膜を作った。
いつの間にかシーツは剥がされ、飛影の両足は今度は大きく開かされ、尻の下には丸めたシーツが宛てがわれていた。
さらけ出された秘部は、勃起しかけているものも、その奥の小さな窄まりも、薄紅色に染まって震えている。
「あうっ、あ、あ!」
蔵馬の指先は蜜を滲ませ始めている先端をつつき、ゆっくり下へおりる。
やわらかな袋を手の中で転がし、さらにやわらかい、その下の皮膚を揉むように、指はなぞる。
虫に食い荒らされた下の口。
まだ腫れ上がって痛々しいその窄まりに、蔵馬は小さな瓶から蜜をたっぷり垂らす。
「あ、っつう!うあ…」
甘い香りの蜜はぬちゃりと音を立て、指先は円を描くように周囲を解す。
何度も何度も指先で撫でられているうちに、腫れたそこは小さく口を開けた。
「ア、ア、ンア……」
「指、入れるぞ。…力抜けよ」
シーツを握りしめ喘いでいた飛影は、目を閉じ、深呼吸をした。
「……ッア、アアアアアッ!! 痛っう!うあ、アアアッ!!」
いつもの痺れるような快感はない。
差し込まれたのは指ではなく焼けた棒か何かなのかと思うほど、ビリッとした痛み。
「ウア!な、何…やめ…!!…ぅっぐう!痛っ、ア!」
指が、蜜のぬめりを借りてぐりっと捩じ込まれる。
「……ぐ、ア、ウアアアアア!!」
飛影の下肢と脳天に、同時に火花が散った。
痛みのあまり噛みしめた唇に、血が滲む。
傷口に酸を流すかのような刺激と痛みに、嫌な汗が噴き出す。
「アア!っくら、嫌、だ…何を…する!」
「何って、いつも通りさ」
お前のかわいい尻が裂けないように、オレがやさしーく広げてやってるんだろ。
いい子だから、尻に力を入れるなって。
大きく息を吸って、吐いて、楽にしろ。
「何が、楽に……ば、か…うあっ!! 痛っ…ア、ウアアアッ!!」
は、と飛影が目を見開く。
ー今オレが突っ込んだって、オレの妖気にあてられてお前は苦しいだけだー
そうか。
そういうこ…と…
精ではなく、生の妖気。
強く鋭い妖気に、弱った体が、傷ついた内臓が、悲鳴を上げる。
「…もうやめろって言っても駄目だからな、飛影」
「ウアアア!イ、ア、ンン!!」
「お前がヤルって言ったんだろう」
「う、あ、うう…っぐ」
自分で言い出した手前、飛影はできるだけ耐えようとはしてみたものの、指が一本入っただけなのに、息もつけないほど痛い。
虫に犯された腸を蔵馬の妖気がかすめるたびに、激痛が刺す。
「ひ、あ!アアア!! 痛うっ!! って!…痛、い…って…言ってるだろこの馬鹿!! 抜け!」
飛影の両手を片手で軽々とまとめ、自分の体で飛影の両足を割った蔵馬は、尻の奥にぐいぐいと指を突っ込む。
指には蜜をたっぷりと付けてはいたが、飛影は鋭い痛みに身をすくませる。
「アアアアッ!! イッ、アッ!嫌、や、痛ぅ、アアッ!! うあ…も、う…やめろ蔵馬!!」
「…じゃあ、やめるか?」
今日は許してやってもいいぞ。
薬を飲んで、大人しく二、三日ねんねするか?
血を滲ませた飛影の唇を舐め、狐は幼子をあやすような甘ったるい声音で問う。
その優しい声色に、相手が何より腹を立てることを知っていて。
思った通り、赤い瞳はギラッと狐を睨め付けた。
「……ふ、ざけっ…っは、あっ………っ…さっさ、と…続けろ」
「やめてー、痛いー、って、さっき言わなかったか?」
「言ってない!黙れ!! 殺されたいのか?貴様…んああっ!」
差し込まれたままの指が、ぐるっと内壁を掻き回す。
堪え切れなかった呻きが、飛影の唇から漏れる。
「その負けん気の強い所がいいんだけどな、飛影。でも」
墓穴を掘るぜ、その性格。
蔵馬は楽しそうに笑うと、指を二本に増やした。
***
見開かれた赤い瞳、しなる白い体。
「アアアアアアッ!! ア、ア、ア!ウアアアッ!」
太く、硬く、長いものが、飛影の尻を貫いた。
まだ癒えているとは言い難い腸内が、爛れた腸壁が、ゴリッと擦られる痛み。
強大で鋭い妖気に抉られる痛み。
赤い瞳は、宝石に変わる雫をこぼしたが、もう中断するには遅すぎる。
「イ、ア、嫌、嫌、やめ…やめろ!! 痛う!! アアア、ウアァァアアーッ!! 」
「だから、もう遅いって…」
オレが中で一回出したら、だいぶ楽になるはずさ。
もうちょっと我慢しろ。
蔵馬はのんびりと言うが、飛影は今にも気を失いそうな青い顔をして、苦痛に喘いでいる。
「ひ、あ、うああっ!嫌、いや、…あ!ああああっ…」
ぐちゅ、ぬぷ、と音を立てる下肢。
男根を差し込まれた部分から、体が崩れ、溶け落ちるような錯覚に、飛影は目を見開き、かはっ、と喘ぐ。
真っ赤な瞳が涙に濡れ、薄く開けた口元から、時折赤い舌がのぞく。
その妖艶な様に、蔵馬はゴクリと喉を鳴らす。
「……お前を捕らえていたやつらは…大馬鹿だな」
「あ、は、んんっ、アア、ウア、アアアアッ!」
「オレなら、お前を虫にやったりはしないな…」
…オレが、犯して犯して、ヤリ殺すところだ。
耳元で囁かれた獣の声に、飛影はびくりと体を強ばらせる。
「き、さま…この…変態!」
「なんとでも」
「う、ぐ、アアアアアアアアッッ!」
あ、あ、あ、と切れ切れに甲高い声が響く。
抜き差しの度に爛れた腸壁はズルリと剥がれ、血を流し、飛影の尻を、蔵馬の陰茎を、真っ赤に染める。
「アア!アア!アッ、う、アアア!! はや、く…出せっ…!この…も、う、無理…」
「もう?オレはまだまだ平気だぞ?」
「ば、か…!死ね、あ、あ、ウアアアアッッ!」
わかったわかった、と蔵馬も熱い息をつき、飛影の大きく開かされていた足をさらに大きく割り、グッと最奥を突いた。
「うあ!アアアァァァアアアッ!……んん!」
中に注ぎ込まれた熱い流れ。
衝撃に飛影は絶叫したが、その声はすぐに甘い響きに変わる。
「アアッッ!…あっあっ…あ、ん…」
「飛影……」
「…ああ、い、あ……っは、ぁ」
たちまち嘘のように和らぐ、苦痛。
同時に現れる快感に、飛影は思わず口元を小さく緩ませる。
蔵馬の腹で擦られ刺激されていた飛影の方も、下腹にビチャッと音をたて、白液をぶちまけていた。
「ん……くら…」
「どうだ?…だいぶ楽になっただろう?」
「…あ、ん…う」
ぽわんと頬を染め、飛影は無意識に両足を蔵馬の背に絡めた。
飛影の内部は挿入された肉棒をしっかりと締めつけ、淫らに収縮し始めた。
「ああ、ん…、くら……ぁ…」
「ずいぶんと良さそうじゃないか、飛影」
「…ん……まだ…まだ、だ。さっさと…ぁ、ん…続け…ろ…」
飛影らしいどこまでも尊大なその言葉に、蔵馬は思わず笑った。
***
たっぷり注ぎ込まれた精で、飛影はぽわんと薄紅色の頬をし、蔵馬の腕の中に気だるく納まっていた。
体は抜け殻のようにふわふわ頼りないが、苦痛はもうほとんどない。
「…そういや、なんでお前が来たんだ?躯がお前を呼んだのか?」
自分の下半身がグズグズに崩れてないのを確認した飛影は、ベッドにぽふっと丸くなり、ようやくその疑問を口にした。
「躯じゃない。お前がオレを呼んだんだ」
「…呼んでない。何言ってるんだ」
自分で尋ねておいて、飛影は早くもウトウトしている。
「呼んだ。お前がオレを呼んでるって、わかった」
「嘘言え…」
「半分は本当だぞ。なんだか急にお前に会いたくなったんだ」
だから、百足に行った。お前に会いに。
そうしたら、百足から飛び出してきた…なんて言ったっけ?あのむさ苦しい男。ああ、時雨とかいうやつと、躯と、鉢合わせてな。
躯のやつ、オレに向かって、ちょうどいい、お前が行けって。
「…何がちょうどいいんだ…」
「でも…オレが行かなければ、躯はお前を助けに行ったぞ。間違いなく、な」
その言葉に困惑した顔をする飛影にシーツをかけ、蔵馬は膝の上に抱き上げる。
「…躯が?」
「あの女、お前がよっぽど可愛いんだな」
面白くなさそうな顔をして、蔵馬は口を尖らせる。
「惚れっぽいお前が躯に惚れちゃ困るんでね」
そのお役目、オレが喜んで仰せつかったわけさ。
「…躯がオレを助けに来るだと?なぜだ?馬鹿言うな」
「オレの言うことが信じられないなら、馬鹿はお前だろ」
怒るべきなのだろうが、眠くてたまらない飛影は、聞き流してやる。
「…もう黙れ。オレは寝る…」
妖狐の姿をしている蔵馬の、逞しい胸にもたれ、飛影は目を閉じる。
「………くら、ま…」
「なんだ?礼ならいいぞ。起きたらたっぷり払わせる」
「ちが、う……」
目を閉じたまま、眠りの淵を漂いながら、飛影は呟く。
「…お前がオレを助けに来たよう…に…オレにも…お前を助けに行く必要が…ある…んだろう?」
「それが愛だろうが。なんだ、その義務的な言い方」
「義務…じゃ、なく……オレだってお前を…きっと…お前を助け、に…だから…」
だから、と飛影は半分寝言のように言った。
「だから…蔵馬……お前が来たのは…当然…だ…礼な、んか」
…誰が言うか。
小さく口を開けたまま、コトンと眠りに落ちた飛影を、蔵馬はまじまじと見つめる。
「……飛影。お前って…」
お前って、本当に、かわいくない。
本当に、本当に、
「…かわいいやつ」
強く誇り高い魂を納めた小さな体を抱き上げ、蔵馬は相好を崩し、唇を重ねた。
...End.
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