Loop Dragon Act.1...8

無我夢中で。
我を失って。

こういう状態をいうのかもしれない。

昨日のように硬く怯えたような表情ではない。頬は紅く染まり瞳は熱に潤んでいる。
ベッドに入った蔵馬を追いかけるように、飛影もベッドに入る。
下半身を焼く熱に耐えきれず、すでに思考はまとまっていないのだろう。

「あ、…ん」

自ら進んで蔵馬のモノに手をのばした。
飛影の下肢はすでに膝までぐっしょり濡れていて、ベッドにもポタポタと花の芳香が滴る。
上衣は身に着けたままのその姿はひどく淫猥に見えた。

「ん…ぐっう」

涙目で時々えづきながらも段々と深く銜え込む。
小さな舌が、稚拙な動きを見せた。

「…やっぱり、下手くそだね。でも昨日よりは全然マシだ。熱意は技術を埋め合わせるからね」

蔵馬はクスクス笑うと、飛影の髪を梳いた。

「ん…んん…」

チロチロと小さな赤い舌が覗く。
潤んだ赤い瞳が、これでいいのかとでも問いたげに、時折蔵馬を不安そうに見上げる。

「まあ、頑張っている所悪いけど、下手だよ。お尻の方がマシかもね。いつもしてもらうばっかりだったの?」

ぷは、と息をつくために飛影が口を離した。

「…した事はないと、昨日も言っただろう!」

熱に浮かされ、ままならない体を震わせて、飛影は小さく叫んだ。

…こんな恥ずかしい事をこいつは何度言わせるつもりだ。

「本当に?突っ込んだらすぐバレるんだよそんな嘘?」
「…ぅぁ…ああもう!どうだっていいからそれを早く寄越せ!」

ベッドサイドのテーブルに置かれた小瓶に、飛影が思わず手をのばす。

「あっ…!」

蔵馬の股間に顔を埋めていた体勢から、急にひっくり返され仰向けにされる。

碧の瞳が、頭の先からつま先まで、飛影の体をじっくり眺める。

「じゃあ…確かめてみようかな」
「な、に…?」

飛影の耳たぶを、蔵馬が軽く噛んだ。
腹の辺りまで撫でるように降ろされた手が、器用に飛影の上衣もするりと脱がせた。

「あ、っ…」

そのまま首筋から鎖骨へと、唇が落とされる。
鎖骨の窪みを伝い、胸を舌が這う。

「ああっ!」

乳首に熱い感触。
舌で舐め回され、歯を立てられた。

「なに、してんだ…馬鹿!よせ!」
「どうして?気持ちいいでしょ?」

引っ張るように、またそこに、歯が立てられる。
その粒を味わうように、舌の上で転がされる。

「痛っ!」
「ほら、赤くいい色になってきた」
「何…」

色付いた乳首が、白い肌の上でぷくりと膨らんでいた。

「ね?気持ちいいとこうなるわけ」
「な、あ…。良くない!もうよせ!」
「そお?じゃあ次行こうか」
「そういう意味じゃな…っ!」

内股の感触を確かめるように蔵馬の指が滑り、足を大きく開かせる。昨日すでに見られている場所なのに、飛影は必死に足を閉じようとした。

「恥じらい方は、バージンっぽくていいけど」

蔵馬は膝をつかみ、足を大きく開かせる。
そしてその中央に唇を寄せた。

温かな口内に、性器が包まれる。
初めて味わう感触。

「っあ…あああ!!っ、あ!嫌…だ!」

飛影が目を見張って叫ぶ。

指先が袋を揉み、舌がゆっくりと付け根から先端へと滑る。
温かな口の中で、甘噛みされ先端を突かれる。

「ん!あ、ああ…んぐ…」

細く肉の薄い下腹がぶるっと痙攣した。
声を漏らすまいと飛影は口を押さえた。

その瞬間痙攣を起こした後ろの穴から、またもや花の香りの液体がトロリと流れた。

「…あ、嫌…」

ごくり、という音に、飛影は信じられないといった表情で蔵馬を見下ろす。

「早すぎ…」

蔵馬は唇から垂れた液をペロリと舐め、ニッと笑った。

「の…飲んだのか!? そ…んな汚いもの…!よ…よくそんな事ができるな!?」
「…その言い草。本当は君がするはずの事だよ?自分の立場わかってるの?」
「…あ…」
「さて、どうする?どの形が好き?」
「か、形?」
「ふうん。カマトトなんだか本物なんだか」

なかなか演技派だね。
君のその綺麗な瞳が見れるように、正常位にしようか。

蔵馬はそう言うと、ベッドに飛影を寝かせ、足を肩につくまで持ち上げさせた。

「濡らす必要はないみたいだね…お尻、ビショビショだよ」
「……うるさい!」
「一応、中も確かめておこうか?」
「い、よせ!」

ずぷっと指が挿入される。
中を確かめるようにぐるりと一回転し、ずるりと抜かれた。

「あ!ヒッ!うあ…」
「問題なし。ぬるぬるで、すごく熱い」
「…は…」
「何?聞こえないよ?」
「ゃ…く…早く!」

指を挿れられた瞬間の、凄まじい快感。
昨日はあれほど嫌だったのに、今は穴が熱く熱く疼いて、挿れられた指の感触がたまらない快感だった。

「いいよ…自分で広げてごらん」

熱に浮かされたように飛影はもう十分開いている足を高く上げ、自分の手を使って尻の肉をさらに大きく広げた。
尻の中央の小さな穴が捩れ、内部の赤い粘膜を覗かせた。

そこにあてがわれた、硬くて熱いものを見る事は、怖くてできない。
見たら、逃げ出してしまいそうだ。

「楽にして…お尻の力を抜いて…」
「は…ん、んんん!ぐ、っう!アッアアァァアアア!!」

襞を広げ、筋肉の輪を広げ、体内に…他人の肉がずぶりと入り込む。

指とは、全然違う。
異物感。
ひどい圧迫感。

内臓が、熱い異物にぐっと押し広げられる。

尻からまたどっと溢れるように流れた、潤滑油にぴったりのぬるつく液体。
それなのに…

「あっ!ああ、ん!痛っう!うあああ!!」

流れの中に、一筋、二筋、鮮やかな朱が混ざり始める。

「痛う!いた、痛い!あ!…うあ!苦、し…痛い!!」
「驚いたな…ほんとに初めてだったの?」

飛影はひどい痛みに呻き声をあげ、涙を零した。
出血はひどくなり、尻を赤く染めていく。

「待って。今、気持ちよくしてあげるから…」
「ひっ、痛っ!あ…」

体内の脈打つ異物がゆっくり動き出す。
傷付いた穴を擦るような動きに、飛影はまた呻いた。

「力を抜いて。自分の気持ちいい所に当たるように君も動くんだよ」

無理、だ。
挿れられた場所が、裂けて、ひどく痛い。
入口だけでなく中も裂けたようだ。花の香りに、鮮血の匂いが混ざりはじめる。

飛影はますます体を硬くし、苦痛に体を捩る。

「あっ痛う!うう…あ…」
「聞き分けのない子だね。力を抜くんだよ。…しょうがないなあ、俺が見つけてあげる」
「見つ…け…?何…あ!ああん!」

角度を変えて、深さを変えて、ありとあらゆる角度で異物が中を探る。内臓を抉られるようで、嘔吐感に襲われる。

白いシーツに、赤い染みがみるみる広がっていく。

「痛っ、うあ…気持ち悪、い…やめ…やめてくれ!…痛…い…!」
「痛いなら言うことを聞くんだね。…ゆっくり、息を吐いて。お尻の力を抜いて」

苦痛をやわらげようと、飛影は言われた通りになんとか息を吐く。
わずかに緩んだそこを、グッと突かれる。

「ん…ぐ、…うあ?ああああぅあ!」
「あった。ね?ここ、いいでしょ?」

体の中の一点を突かれた途端、飛影の目の前に光が弾けた。

「うあ…んー!」
「…前がまた勃ち上がってきたみたいだけど?わかってきたみたいだね、お兄ちゃん」

「あ、はっ、ああ、ん」

飛影は瞳を潤ませ、涙を零し、腰を揺らす。

気持ち、いい。
痛いのに、とんでもなく痛いのに、
どくどく疼いて血を流すそこが、とろけそうな感覚を生み出す。

こんな感覚、知らない。

違う、これは俺のせいじゃない、と飛影は自分に言い聞かせる。
こいつが俺の体内に入れた、花の香りのおかしな薬のせいだ。そうに決まっている。

…そうだとしても、情けなさすぎる。

熱い肉棒が、抜ける寸前までグッと引かれる。
抜かせまいと思わず肉壺を硬く締めたのは、間違いなく自分の体だ。

裏切り者の体は、もっともっとと淫らに動き、尻を蔵馬の股間に押し付ける。
より深い結合を求め、足は蔵馬の背に絡められていく。

欲しい。
もっと深くに。
もっと強く。

「淫乱だね…お兄ちゃん。初めてだってのにもう目覚めちゃった?」

もう飛影には蔵馬の言葉は聞こえていない。
熱い穴が、蔵馬を食い千切るように締めつけた。

「…ん。…いいね、そうでなきゃ。八億二千ディリ分、たっぷり楽しませてよ」

スイートルームの広い部屋が、噎せるような花の香と喘ぎ声に満たされた。
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