Loop Dragon Act.1...5

はい、と渡されたスポンジを握ったまま、飛影は固まっていた。

蔵馬はたっぷりと泡の立ったバスタブの中で、飛影はその隣のシャワースペースで。
風呂に入っている間は時間稼ぎができると思ったのに、蔵馬は当然のように一緒にバスルームにいた。

「これ…」
「お風呂に入ったのも初めてだとでも言うつもり?体を洗いなよ」

バスルームに呼ばれた時にはもう、たっぷりの泡の立った大きなバスタブに浸かった蔵馬の体は見えなかった。

それに引き換え…

シャワースペースで、スポンジだけ持たされた飛影の裸は蔵馬からも丸見えだ。

ループドラゴンの寮には、各部屋にバスルームが完備されている。
こんな風に人前で風呂に入った事はない。

飛影はバスタブの反対方向を向き、シャワーのコックをひねる。
降り注ぐ熱い湯に打たれながら、スポンジをぶわぶわと必死で泡立て、裸身を隠すように泡をなすり付ける。

「こっちを向いて洗うんだよ。お尻もかわいいけど、まずは前を見せて」

そう言われ、情けない気持ちで蔵馬の方をのろのろと向いた。

「どうぞ。続けて」

そう言われても指がこわばって上手く洗えない。
こんな風に人にじっと見られながら自分の体を洗う。その行為と足下に流れ落ちるシャワーの蒸気とバスジェルの噎せるような花の香りで、早くも飛影はのぼせそうになっていた。

腕を、足を、首を、胸を、腹を、ぎこちなく洗う。

下腹までスポンジを降ろし、その下を隠すように洗おうとすると、手をつかまれた。

「…っ、何…」
「そんな洗い方なの?これから使うのに」

綺麗だが、意地の悪い笑み。

「ここに、座って。俺が洗ってあげる」

バスタブの縁に腰掛けるよう、飛影を促す。
ずるい、なんて思うのはそもそも間違っているけれど…

バスタブの縁に腰掛けた飛影は膝から下だけが泡と湯に隠れ、あとは丸見えだ。
蔵馬は全身が泡に隠れている。
自分がなぜここにいるのか分かってはいても、ひどく惨めな思いで、飛影はうつむいた。

次の瞬間、惨めな気持ちだの、憤りだの、吹っ飛んだ。

「あ、ん!ちょ…何をする…っ」

蔵馬はたっぷりと泡を乗せたスポンジで、飛影の陰茎を包んで上下に擦り出した。

「んあぁ!やめ、んん!」

温かく、ふわふわしたスポンジはいい匂いの泡をぶくぶく出しながらゆっくりと上下を擦り、先端を行き来する。

「あっあっ!な、よせ…」
「こうやって、洗うんだよ。ほら、ここも」

勃ちあがりかかっている陰茎を蔵馬は片手で持ち上げ、その下に続く、柔らかな皮膚を強く押すように擦る。

「うあ!ぁ…あ、ん!」
「ここね、人間界だと蟻の門渡り、って言うんだよ。気持ちいいでしょ?」
「嫌、やめろ…ぁ」

バスタブに腰掛けていた体が力なくずるずると湯の中へ滑る。

「じゃあ、今度はこっち」

バスタブに沈みかけていた体を抱き上げられ、タイルの床に降ろされる。バスルーム内は温かな湯気が充満していて、冷たいはずのタイルも温まっていた。

「はい、足を上げて、肩につくくらいまで」
「え、あ、…よせ…」

仰向けになった両足を持ち上げられ、それぞれの肩につくまで広げられる。
あまりの恥ずかしさに、とうとう飛影は抵抗しようとする。

「あれ?もうギブアップ?じゃあ妹を呼ぼうか?」
「…っ!」

降ろされかけていた足を、飛影は大きく開き肩までつけた。

目をぎゅっと閉じる。
大股を開き、目の前の男の眼前に何もかもを晒す羞恥。
恥ずかしくて恥ずかしくて頭が爆発しそうだ。

「ここも、ね。洗ってあげる。…ずいぶん綺麗な色してるね。まさかほんとに初めてなの?」

スポンジが、ぬるりと飛影の尻の狭間を滑った。

「んん!」

尻が跳ねる。

他人の手が、排泄に使うためのその穴を、スポンジでくるくると擦る。

「んぁ!ああ…」
「洗う必要ないくらい綺麗。ピンク色で…皺も綺麗に揃ってる」

卑猥な言葉に耳を塞ぎたいが、少しでも声を抑えるために飛影の両手は口を塞ぐのに使われている。

「どうしたの?声を上げていいんだよ?」

冗談じゃない。
こんな…こんな…

「じゃあ…自称バージンさんのここを慣らしてあげましょうかね?」

そう言うと蔵馬は、スポンジに含ませたのと同じ花の香りのするバスジェルを手に取る。

「な、らす…?」
「穴が柔らかく開くように、ほぐしてあげるよ。裂けるとすごく痛いからね」
「しなくていい!やめろ!あ、あああぁん!」

蔵馬の長い指が、ジェルのぬめりとともにズッと挿入された。

「あ…、っは、あ、ああ…」

第一関節、第二関節、中指が根元まですっぽり納まる。

「あ、抜け、うあ…気持ち…悪…い」

尻の中の排泄できない異物。
初めての感覚に飛影は動転している。

蔵馬はそんな飛影を見下ろしにっこり笑うと、中に挿れた指を動かしはじめた。

「あああ!あ、あん!」

穴を大きく広げるように、指を大きく回す。
その度に飛影のそこは、苦しそうに口を開けた。

「もう一本、挿れておこうか?」

指が二本になり、抜き差しをしながら掻き回される。

「っあ痛っ!痛い!」
「まだバージンぶるわけ?…確かにすごく狭いけど」

妖怪の初物なんてせいぜい産まれて一年くらいでしょ?何カマトトぶってんの。
蔵馬はそう言って冷たく笑う。

「あァっ!あ、うあ!」

じゅぽん、と音をたてていきなり指が抜かれる。

胸を上下させ、荒い呼吸を繰り返す飛影に、シャワーの温水がかけられる。

「はい、準備おしまい」

ここじゃあ、のぼせちゃう。
続きはベッドでしよう、お兄ちゃん。

蔵馬はそう笑うと、飛影にバスタオルを投げた。
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