After Day

【レイカ様が「LOVE DISTANCE」の後日談(翌日談?)を書いてくださいました。お言葉に甘えて掲載させていただきます。ありがとうございました!】
***
二人は、いつもの俊敏さはどこへやら、ぶらぶらと魔界の森を歩いていた。
平和とはお世辞にも言えない森を平和に歩いて、目指すのは威圧感をかもし出している『百足』。その入り口に迫ったとき、飛影はやっと、隣の影に視線をやった。

「ここでいい」
「大丈夫?躯、ずいぶん怒ってるんじゃない?」

会議をすっぱりとサボった上に、一日半も行方不明を決め込んだのだ。
怒っていない、わけがない。

最悪また腹に穴があくだろうな、と嫌な予想をして、飛影はわずかに眉を寄せた。

おまけに。

一晩中、アレやコレやとナニを致されてしまったので、コンディションは最悪である。
だから、蔵馬にここまで着いてこられるはめになってしまった。
百足まで送る、と言われて、最初こそ冗談じゃないと断ったけれど。
抱きしめられて、心配だから、と切なげに言われると、突っぱね切れなかった。

「また、会いに来てくれる?」
「ああ・・・」

蔵馬の手が、頬に添えられて、そっと目を閉じようとした瞬間。
恐ろしい殺気と、すさまじい妖気。
ソレに慣れ親しんでいた飛影は、蔵馬を抱えて後方へ飛んだ。

直後に、爆音。
地面には亀裂が走り、砂煙が舞い上がる。

「うーん、うれしいんだけど、逆が良かったなぁ」

飛影に抱きかかえられたまま、蔵馬がのんびりとつぶやく。
その声に、我に返った飛影が、叩き付けるように、抱えていた身体を放り捨てた。
粗雑な扱いを気にもとめず、蔵馬がにっこりと微笑んで礼を言うと、おさまりかけた砂煙のむこうから、
世にも恐ろしい声が響いてきた。

「よぉ。やっとお帰りか」

女帝みずからのお出迎え、である。
飛影は強烈な舌打ちをした。

「おや?狐。送ってきたのか?」
「ええ。・・・というか貴女、今、殺す気まんまんでしたね?」
「当たり前だ」

淡々と答えて、躯はゆっくりこちらへ歩いてくる。
その雰囲気は穏やかであるものの、油断はできない。
飛影は身構えて応戦体制をとっていたが、女帝の声は、蔵馬に向かって語りかけていた。

「雷禅の息子にきいたぞ。人間界では、こーゆー状況の場合、俺はお前を殴って良いんだそうだな」
「ちょっと待ってください、幽助から何を吹き込まれたんですか?」
「『娘が嫁にいくときは、父親は娘の彼氏を殴る権利がある』だそうだ」
「なるほど」
「おいっ、ちょっと待て!」

誰が娘で、誰が父親で、誰が嫁にいくんだ!とツッコミたかった飛影であるが。
普段の無口が災いして、思ったとおりの言葉が出てこない。
蔵馬はあっさりと納得して、無防備に躯の前に立っている。

「そういうことなら、確かに貴女には俺を殴る権利がある」

蔵馬が言った瞬間。
躯の華麗な蹴りが炸裂し、森の木々を数本なぎ倒して、彼の身体が吹っ飛んだ。

「蔵馬!」

飛影が瞬時においかける。
その後ろ姿を見て、躯は深い深いため息をつくと、百足に向かって

「おーい、再生ポッドの準備をしておけ!」

と、間延びした声で叫んだ。
頭の後ろで手を組んで、のんびりと百足にもどる彼女は、途中でふと歩みを止めてつぶやく。

「しまった。殴っていいとは言われたが、蹴っていいとはいわれなかったな」

まぁいいか、と。
気が済んだ女帝は、大あくびをした。

おしまい
***
〜レイカ様より〜

すみません、なんかもう色々すみません(滝汗)
でもつい、思い浮かんでしまったので・・・。
このあと、蔵馬の再生ポッドの前で刀抱えて座り込んでる飛影に、
躯が「おい、狐の肩にある歯型はお前のか?治してもいいか?」←悪意無し、真面目に聞いてみた。
と声をかけ→カッとなった飛影が飛び掛る→躯、条件反射で応戦→飛影も再生ポッド行き。
に、なると勝手に妄想を重ねております(笑)