Loop
Dragon Act.1...6
もう、嫌だ。
帰りたい。
掻き回された尻の穴はジンジン痛いし、それより何より自分でも見た事がないようなところを人に見られ、触られ、指を挿れられた事実に目がくらむ。
そして今は…
ベッドに寄り掛かるように寝そべった男の股間に、飛影は顔を押し当てられている。
「バージンごっこはおしまい。舐めるんだよ。それくらいできるでしょ?」
できない。
したくない。
さっきは泡に隠れてよく見えなかった蔵馬のモノは、勃っていない今でさえ十分デカい。
女のような綺麗な顔立ちからは分からなかった、しなやかだが精悍な体。
女だって男だって選り取り見取りだろうに、なぜこんな事を?
「さっさとしなよ、お兄ちゃん。言われた通りになんでもするって言っただろう?」
そうだ。確かにそう言った。
おそるおそる手でそれをつかむ。
熱くて、大きくて、…かすかに脈打っている。
なんとか両手でつかみ、震える唇に銜えた。
「…っ!」
さっきの風呂のバスジェルの、花の香りのするそこ。
他人の性器が自分の口の中にあるという事実に、猛烈に吐き気が込み上げる。
そのまま何もできずに、飛影は硬直していた。
「もっと奥まで銜えるんだよ。そんな事も知らないの?」
無理だ。
あとちょっとでも深く銜えたら、吐いてしまう。
先端を銜えていただけの状態にイラついたのか、蔵馬が飛影の髪をつかみ、のどの奥まで一気に突っ込んだ。
「んう!! ぐう!うぁ…」
のどの奥を思いきり突かれ、たまらずに飛影は蔵馬を突き飛ばした。
「う、あ…ぐ」
吐き…そう…
だめだ。我慢できない。
よろよろとベッドから身を乗り出し、ゴボッ、と音をたてて飛影は床に嘔吐した。
「ぐ、ゲホッ、うえっ…」
身を震わせ、胃がからっぽになるまで吐く。
「あ、あ…」
バサッとバスローブが投げられた。
「あ…」
「…興醒めだ。帰りなよ。下手くそ」
自分もさっさとバスローブを羽織り、窓辺のソファに移った蔵馬が冷たく言い放つ。
「でも…俺は…」
「もういいよ。君はいらない」
腕を引かれ、無理やり立たされる。
バスローブが肌から滑り落ちた。
裸のままドアから放り出され、さっきまで着ていた服を投げ付けられる。
「じゃあね。口先だけのお兄ちゃん」
「待っ…」
ドアが、バタンと閉ざされた。
***
「飛影!」
こっそり部屋に戻ったのに、いつもは酔っぱらって寝ているはずの時間に、幽助は起きていた。
「起きてたのか」
「こんな時に寝てるほど俺は薄情じゃないっつの!おめーあいつの所にほんとに行ったのか!? あれ?なんだその服!?」
「…ああ。話はつけてきた」
「つけたって…どうやって!?」
「…お前には関係ない」
「関係ねえって事はねえだろ!こっちゃ心配してたのによ!」
「うるさ…」
「おい、お前真っ青じゃねーか!大丈夫かよ?何があったんだ?」
ホテルのトイレで顔や手は洗ってきたが、さんざん嘔吐した後のひどい顔色は誤魔化せない。
「別に」
「別にって…ったくおめーはかわいくねえなあ!勝手にしろよ!」
人の好い幽助もさすがにムッとし、自分の寝室へ行ってしまった。
共同スペースの居間を挟むようにして、幽助と飛影はそれぞれの寝室を持っている。
幽助の寝室のドアがバタンと乱暴に閉められたのを確認し、飛影はほっとして浴室にフラフラと向かう。
シャワーから熱いお湯が体に降り注いだ途端、自分の体から花の香りが漂い、思わず床にうずくまる。
体が、震える。
こんな…これで…雪菜は大丈夫なのだろうか?
結局俺は何も出来なかった。
風呂に入れられ、ベッドでは何も出来ず、げえげえ吐いて帰ってきた。
なんという有り様。なんという役立たず。
まさに口先だけもいいところだ。
ーもういいよ。君はいらないー
ーじゃあね。口先だけのお兄ちゃんー
それはつまりもうこの話はなかった事にしてくれると言う事なのか…?
…八億二千ディリ。
そんな訳ない。そんな都合のいい話があるわけがない。
飛影は途方に暮れたまま、たっぷりの湯に打たれていた。
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