10.身長
「オレね、あなたのどこもかしこも全部好き」
そう言って蔵馬はにっこり笑った。
***
「はあ?」
ベッドの上で、お互い素っ裸で。
たっぷりと時間をかけたキスをされ、乳首を弄られ、内股を舌が這っていたところで言われた言葉。
思わずとろけかけていた意識が引き戻された。
「どこもかしこも…?」
「うん」
蔵馬はもう一度にっこり笑う。
「この黒髪も、白い肌も、すっごく綺麗な赤い眼も…」
蔵馬がいつの間にかオレの膝を割り、大きく広げた両足の間に顔を埋めていた。
「…すぐに勃っちゃう、ここも」
「ばっ…馬鹿か!何わけの分からん事を!っア!ん!」
どうしてこいつはこう余計な事ばかり言うのだろう。
何度体を繋げても羞恥心を消せないオレとしては、せめて行為の間、余計に恥ずかしくなるような事を言わないで欲しい。
温かい口の中で、ねっとりと舐め上げられ、軽く歯を立てられる。
「あ…ぅ…」
気持ち、いい。
自分自身が熱く脈打つ。
「あっあっ、ん、ん…」
「背が、ちっちゃいところも、好き」
カチンときた。
頼むから黙ってやってくれ。
身長の事など気にしてなどいない…が、指摘されるのが愉快な訳もない。
「…貴様…放せ!」
蔵馬はそれを口から引き抜くと、先端をチロリと舐める。
「ん!あ…」
「いいじゃない?オレはこの小さな身体が好き。オレの腕の中にすっぽり納まって、ちょうどいいよ」
「そういう問題、じゃ…ない!貴様にちょうど…よく納まるため、にオレの体はあるんじゃない!っあ!ああ!」
舐める事と喋る事を同時にやってのけるこの変態に、オレの息も絶え絶えの抗議の声は聞こえていないらしい。
「あ、あっあっ、んん」
「まあ、強いて言えば、ずいぶん身長差があるから出来ない体位も多いのが残念かなー。…あ、そうだ!」
何事か思いついた蔵馬が目を輝かす。
と、いうことはオレにとってはロクな事じゃない。
「シックスナイン、してみない?」
「しっく…何?」
「あなたとオレじゃ無理だと思ってたんだけど…横向きならいけるかも」
「何だか知らんがやらん!…ちょ、…っ何をする…」
押し倒され、体を無理やり横向きにされる。
同じように横向きになって体を丸めた蔵馬の…
あれが、目の前にあった。
***
「な、何のマネ…うあ!あああ!」
さっきの刺激でまだ勃ちあがっていたオレを、蔵馬がまた銜えた。
「あ、あ、ん…」
「飛影、オレのもちゃんとしてよ」
そう言われてやっとこの行為の意味がわかり、互いが互いの尻や股間に同時に顔を埋めるこの体勢に顔から火が出そうになる。
「嫌、だ!馬鹿野郎!オレはやらん!んぅ!…ぁ痛っ!」
爪で先端を引っかかれた。
ビリッとした痛み。
「んあ!」
また、引っかかれる。
つまり、オレにもやれと催促…脅迫?…しているわけか。
畜生。
なんとか手でそれに触れ、口を近づけようとしたが、どうにも自分に与えられる刺激の方に意識を奪われて体がいうことをきかない。体ががくがく震える。
何度も何度もされている行為なのに、いまだにオレは自分をコントロール出来ず、乱れた痴態を晒している。
前に与えられる刺激に、尻の奥がヒクッと動いたのが自分でもわかった。
…後ろも、して欲しい。
そんな事は恥ずかしくて絶対に言えやしない。
つま先でシーツを乱しながら、オレは無言の期待を込めて待っている。
「…後ろも、して欲しい?」
欲しい。
指でいじって、広げて欲しい。
襞をのばすような指の動きや、体内を掻き回される感触を思い出して思わず喉が鳴る。
「じゃあオレのも銜えて」
「……っ、くそ…」
なんとか、口に含む。
いまいましい事だが、オレのとはずいぶん大きさが違うそれは、口の中に納まりきらない。
早く…早く。
だが蔵馬はまた前への刺激を再開し、なかなか後ろに触ってくれない。
下肢にずくん、と甘く重たい痺れが走る。
「あァッ……あっや……、あッ……ん!」
下腹がぶるっと波打ち、オレは我慢できずに蔵馬の口の中に放った。
「ん、あ…いや…ぁ」
オレはもうとっくに蔵馬のものから手も口も放し、自分の快感だけに没頭する。
根こそぎ絞り取るようにギュッと吸われる。
いつもならその液体を飲み込む音が聞こえるはずなのに、今日は違った。
「…っ」
ヒクついている穴に唇を寄せられ、顔が熱くなる。
次の瞬間、蔵馬がそこに、舌をねじ込んだ。
「え、…何、くら…やめ、あ、ああああああ!」
信じられない。
オレの放った液を、オレの中へ流し込もうとしている。
「ああああ!っあ、よせ!この馬鹿!やめ…あ!」
ドロリと生暖かい液体が直腸へ入ってくる。
気持ち悪い…!
ぬるりとした液体はオレの直腸の中に、とぷりと納まる。
出したくても、蔵馬の舌が栓をするようにそれを押し止め、更に奥へと流し込む。
「ん!あ!あああああ!嫌、だ…あ、う…気持ち…悪い…」
しょっちゅう蔵馬に中に出されているのに、自分が出したものが自分の尻に注入されたかと思うと吐き気がした。
蔵馬の舌がようやく抜かれる。
安堵して出そうとした途端、蔵馬がそこを親指の腹で塞いだ。
せき止められた流れは、当然体内に戻される。
「ああっ!う!き、貴様!やめ…気持ち悪い…っ」
「出しちゃだめ。今日はこれを潤滑剤がわりにするんだから」
「嫌…だ!っ、気持ち悪い!」
「いつもオレのはいっぱい入れてるじゃない。おんなじでしょ?」
同じ、じゃない。
その証拠にそこは出したがってヒクヒクしている。
…苦しい。
蔵馬の出すものと同じ成分だとは思えないぐらい、違和感がある。
「シックスナインなのに、自分だけ気持ち良くなっちゃった罰」
「貴様が勝手に始めたんだろう!オレはやるなんて言ってない!あっ!」
親指が、襞を広げて中にぐっと入りこむ。
その刺激に、前がビクンと動く。
「…あなたって本当にエロいね」
「貴様に言われる筋合いは、な、んん」
親指が、穴の入口付近で曲げのばしされる。
「ああ、ひっ、うあ、もうよせ!いい加減に…」
「あれ?もう降参?」
「……」
「そんな訳ないよねー?負けず嫌いの君だもんね?」
「……」
「もう一回、挑戦する?」
こんな事に負けるも何も、挑戦するも何もあるか!
しない、と答えるべきだったのだ。
我ながら馬鹿だ。
***
「………お前なんか、大っ嫌いだ!!」
「えー?楽しんだでしょ?なんだかんだ言ってさ」
あれからもう三回もシックスナインに挑戦させられ、三回とも同じ結末となり、罰ゲームと称して散々な目に遭った。
腰や尻は痛むし、下腹はまだ波打っているような気さえする。
背の高い蔵馬に押さえ込まれてしまっては、ベッドの上ではどうしたってオレは不利だ。
自分と蔵馬の分を大量に流し込まれたそこは、体内に納まりきらない白液をぬるぬると引っ切りなしに垂れ流し、シーツを汚していた。
…今すぐ中を洗っておかないと、間違いなくひどい腹痛に見舞われる。
「…覚えてろよ」
オレはバスルームに向かうべく、よろめきながらも立ち上った。
その拍子に、太股につうっと生暖かい液体が伝い落ちる。
「……!」
「お風呂まで抱っこしてってあげるよ、飛影」
「うるさい!余計な世話だ!」
「あ、また垂れた」
言われた言葉に思わず赤面する。
立ちすくんだ体をひょいと抱き上げられる。
「奥まで掻き出せないでしょ?オレがしてあげる」
「何が、してあげる、だ!お前のせいだろう!」
「でしょ?だからオレが洗ってあげるよ」
あまりに軽々と抱き上げられ、背が小さいところも好きだという言葉を思い出して腹が立つ。
こいつといると腹の立つ事が度々あると言うのに、なぜオレは懲りずに会いに来てしまうのだろう?
「…言っとくけどな、蔵馬。オレがそのうちお前より大きくならんとも限らんからな!」
「いいよこのままで。オレより背の高いあなたなんて何か変だし」
「勝手な事言うな」
「あ、大きくなるって身長の事でいいんだよね?他のところじゃないよね?」
「……?…!! 馬鹿!死ね!」
きれいな顔で信じられない卑猥な言葉を吐く蔵馬をぶん殴り、オレはバスルームに駆け込み、力いっぱいドアを閉めた。
...End.
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