シロップ「や、めろ……」熱く乱れた呼吸の合間に、抗議の声が上がる。 「何…考えて…あ、っう!よせ…!」 困惑したその声を聞いても、蔵馬の手は休む事なく、なめらかに力強く動く。 「な、んなんだ!やめろ…」 ***
困惑するのも無理はない。なぜなら飛影は服を着たまま、だからだ。 上も下もちゃんと着ている。靴さえ履いたままだ。 それなのに、服の上から弄り回され、扱かれ、何度も達した。 後ろで両手を縛っている紐はとても細いのに、なぜか千切る事が出来ない。手が自由ならば、飛影はとっくに蔵馬を突き飛ばし、逃げ出していただろう。 「やめ…っあ、あ!」 服の中に温かい液がまたとぷっと放出される。 「い、や…だ!」 服を脱がせて欲しいと請うなど、プライドの高い飛影には到底出来ない。 おかげで服は精液と汗でグチャグチャに濡れて肌にくっつき、その気持ち悪さといったらない。 「ん!あ…」 濡れた布ごと、またそこを握り締められる。 ニチャッ、という堪え難い音が飛影の耳にも聞こえた。 ***
いつもの、軽い憎まれ口のつもりだった。蔵馬の隠れ家の一つで、いつも通りの逢瀬になるはずだった。 「…よく飽きないな」 会うたびに睦言を囁き、自分を抱こうとする蔵馬に、飛影は呆れたように言った。 もちろん、半分は飛影特有の照れ隠しだったのだが。 「飽きる?何に?」 「こんな…事に、だ」 「飽きないよ」 蔵馬は笑みを浮かべて、きっぱり言う。 「全然、飽きない。貴方は飽きたの?」 そう聞かれて、オレも飽きてない、などと飛影が答えられるはずもない。むしろ全然飽きないなどと明言する蔵馬に、羞恥心はないのかと憤るぐらいだ。 「……ああ。飽きた」 「そう…」 小首を傾げた蔵馬は、じゃあ、こんなのどう?と細い紐を取り出した。 飛影の手を後ろに回し、縛る。 本気を出せば解けない事はない。そんな強さで。 「…両手の自由を奪ったぐらいで、オレが怯えるとでも?」 「まさか」 碧の瞳が、ランプの灯に煌めいた。 「いつもとは違う楽しみ方を、教えてあげようと思ってさ」 ***
一体、何回イッただろう。纏わりつく服を重く感じる程だ。 「…ひっ…うあ…もう…」 「もう?何?よく聞こえない」 息も絶え絶えといった感じの声に意地悪い返答。 懲りずに勃ち上がろうとするそこを、濡れた布が邪魔して痛い。 だが、この責め苦もそろそろ終わるはずだ。 なぜって…服を着たままでは、挿れられないからだ。 口でしてやる気など毛頭ない。 そうなれば蔵馬はオレの服を脱がせるしかない。 だから、もう少しの辛抱だ。 そう考えて、飛影は自分を落ち着かせる。 息を整え、平静を保とうと必死で努力する。 「…そろそろ…オレもしたいな…」 その言葉を待っていたなどと、顔に出さぬよう飛影は唇を噛む。 「…!? な!何をする!!」 飛影の両足を蔵馬は軽々とすくい上げる。 足を高く上げさせられ、前を浸していた液体が重力に従い、尻の狭間をトロリと流れていく。 その感触。 その温かさ。 「バ、バカ!! 何して…アアッ!」 「今日は、着たままで、ね…」 その言葉と同時に、尻の辺りの布がビリッと音を立てて裂かれた。 「な!? やめ…!あ…っ」 布の裂け目から、蜜が滴る。 たっぷりと服の中に溜め込まれていたそれは、ようやく見つけた出口から、トロトロと溢れ出す。 「すごいね…絶景だ」 「見る…なっ!! 放せ!」 飛影は本気で腕を捩ったが、力の脱けた体ではもう解く事は叶わない。 いつの間にやら、蔵馬は自分も服を着たまま前だけを寛げている。 服の中に溜まったその液を、自身に絡めるかのように動かした。 正確な位置が見えてもいないというのに、蔵馬は躊躇う事もなく、それを飛影の小さな穴に、ねっとりと押し込んだ。 いつものように指や舌で慣らされる事なく広げられた襞が切れ、一筋の血を流しながら異物を飲み込む。 「痛うっ!あ!ああ!ん、アアァア!うああ!痛っ!」 服を着ているというのに、体内に、熱く硬いものが挿入される。 そのとてつもなく奇妙な感覚と敏感な箇所が裂けた痛みに、思わず飛影は大声を上げた。 「あっあっ…んんー!あっ!! アアッ!痛う…」 「…硬く締まってるね…オレの方も痛いくらいだよ」 蔵馬は楽しそうに笑うと、抜き差しを始め、徐々にスピードを速める。 「アアッ!! アアッ!! アアッ!! …あう!」 もちろんその間も飛影の前は布越しに弄られ続けている。 腸壁を削り取られるような往復運動の、あまりの長さに涙で目の前が滲む。 頭の芯がとろける程の快感と、痛みと、得体の知れない感覚。 それらは混ざり合って、飛影の心も体も煮溶かす。 「ア、アアアァアア!! ンあァ!!」 ビクビクッ、と飛影の腰が大きく跳ね上がり、蔵馬が差し込まれたままの布の裂け目からはまた新しい蜜が溢れた。 ***
「あ、はっ…ぁ…」飛影はまだ肩で息をしている。 いつもなら事後は二人とも裸のままベッドで抱き合っているが、今日はお互い汗で濡れた服を身に着けたままで、飛影の服の尻の部分だけが裂けていることを除けば、戦闘の後のようにも見えて、ちょっと滑稽だった。 「…きっ、さま…殺すぞ!!」 「えー?貴方が飽きたって言うからさあ」 飽きられないようにオレもいろいろ努力しなくちゃね。 蔵馬は汗に濡れた髪をかき上げ、妖艶に笑う。 本当は、飛影の方だって少しも飽きてはいない事なんか、蔵馬はちゃんと知っている。 「…っ貴様とは…二度とやらん!!」 「それ、時々言われるけど傷つくなあ。そんな事言わないでよ。だって…」 他にもしてみたい事、いっぱいあるんだもん。 そうだなあ。 今思いつくだけでも百個くらいはあるかな。 その言葉に思わず腰を浮かせた飛影を、蔵馬はあっさり捕まえベッドに沈めた。 「さて、どうする?服、脱ぐ?このままもう一回する?」 頬を真っ赤に染めた飛影は、たっぷり一分程も黙り込んでから、自らベルトを引き抜いた。 ...End |