シテ欲シイコト

「…して欲しい事、全部言っていいんだよ」

小さなランプが一つだけ灯る部屋。
飛影は耳元で囁かれた言葉を無視して、赤くなった顔を背ける。

「なんでも言って。あなたがして欲しい事、全部してあげる」

蔵馬がもう一度囁く。
それと同時に繋がった部分を軽く揺らされて、飛影がヒュッっと息を飲む。
熱く太い肉棒を納めた小さな肉壺は、痙攣を伴う素晴らしい締め付けで蔵馬を魅せていた。

頬を染め、汗に濡れ、乱れる呼吸に胸を上下させながら、飛影は蔵馬を睨む。

性交の最中に、要望を言え、というこの馬鹿げた会話をこの男は何度すれば気が済むのだろう。
声さえ上げたくないというのに、要望を嬉々として告げるとでも?

第一、して欲しい事なんて…

そこまで考えた所で飛影の思考は熱い波に遮られる。

「じゃあ…ここは?」
「…っ!…ん」

体内の異物が角度を変えて突き込まれる。

ここも、好き?
…ここはどう?
今度は…こっち…

そう言いながら、蔵馬の肉棒は体内を何度も抉り、唇は首筋や胸元を食む。
指先は生き物のように飛影のものに絡みつき、巧みな動きで追い上げる。

その度に声を殺して体を跳ねさせる飛影の瞳は、すっかり潤んでルビーのように光って…

「…っあ、ああ…うあ…!」

抑え切れない声が、飛影の唇を開かせる。
蔵馬はくすっと笑うと、その唇にキスを落とした。

「ん…ぐ…ア…アァ、あ…ん!」

絡ませ合う舌の隙間から、飛影のくぐもった声が漏れる。

…本当は聞かなくたって分かってる。

彼の、
声が、体が、瞳が、
熱くうねる体の内部が、
手の中でビクビク跳ねるそこが、

シテ欲シイコト、

を、全部蔵馬に伝えている。
言葉よりも遥かに饒舌に。

「アッ!アア…く、ら…っ」

けれど蔵馬は次もまたこう尋ねるのだ。

して欲しい事、全部言っていいんだよ、と。


...End