理由を探して孕めばいい。聞き違えたのだろうか。 何を言われたのかわからず、整わない息の下、オレはなんとか目を開けた。 「なんだと…?っ、なんと言っ…うあ…!」 浅いところをゆるく突いていたものが、急に奥深くへと突き上げる。 突き上げられるまま、押し出されるように声を上げ、とうにびしょびしょだったそこにはさらに、熱くて粘度のある液体が注ぎ込まれる。 「あっ…ああああ…っ!ん、ああああ…」 尻の穴が、きつくきつく締まる。 蔵馬の腰に巻きつけた足が、つま先までぴんと痙攣し、やがて細かな震えになる。 「孕めばいいのに、って言ったんだよ」 「…は、あ、あぁ…んん、あ、あぅ」 なるほど。聞き違いではなかったらしい。 孕めばいい、確かに蔵馬はそう言った。 「な、にを…わけのわからんことを…」 こっちはまだ、肩で息をしている。 何度も何度も擦り上げられた穴も中も熱い。 蔵馬のものは、まだオレの尻の中で、存在を声高に主張したままだ。 「オレの種で孕んだら、オレの子を産んだら、お前は一生オレから離れられないのに、と思ってさ」 蔵馬の背に何本もの赤い線を引いたであろう自分の手をゆっくりと外し、額を伝う汗を拭う。 こうして何も纏うもののない姿を、誰にも見せたことのないような姿を見せて繋がっても、蔵馬のことはいまだによくわからない。 何を求めているのか、何をしようとしているのか。 「オレが子を孕めたとして…それが貴様の種だとして、だったらなんだというんだ?」 「お前はいつかオレの元を去るかもしれない。オレを忘れるかもしれない。でも」 汗を拭ったオレの手を蔵馬は取り、濡れた手のひらを舌先でつうっと舐める。 「お前の腹を膨らませた種の持ち主を、愛しい子供の父親を、お前は捨てきれないだろう?忘れることもできないだろう?」 お前がオレの種を孕めば、お前は一生オレと縁を切ることができない。 子供から父親を奪うような真似も、お前にはできない。 「…お前は情が深いからな」 情が深いという小馬鹿にした言葉と、皮肉っぽい笑みと、どちらに対して怒るべきかわからず、オレはただ覆いかぶさったままの蔵馬を見あげた。 「誰が…情けなど…」 「これほど深い色をした魂に、オレは会ったことがないよ。お前は妖のくせに、忌み子のくせに、愛を絶対手放さない」 戯れ言だ。 ふざけるな、どけ、いつものようにそう言って押しのけて、起き上がればいい。 蔵馬が訳のわからないことを言うのは珍しくもない。尻の中に納まるものを引っこ抜き、立ち去ればいい。それだけのことだ。 力の抜けかけていた足に力を込め、蔵馬の腰をぐいっと引き寄せる。 「飛影?」 「…やってみろ」 オレを孕ませてみろ。オレの中に出して出して、腹の中がぱんぱんになるくらいに。 お前以外のことを、何も考えられなくなるくらいに。 孕むまで、ずっと続けたらいい。 「…できるのか?」 尻の中のものが急に硬くなり、熱さを取り戻す。子供のように抱き上げられ、勢いよく上下に揺らされた。 絶え間ない嬌声をどこか遠くに聞きながら、熱いもので濡らされていく。注がれて満たされていく。 蔵馬。 どんなことがあっても離れられない理由を作りたがっているのは、お前じゃない。 その理由を欲しているのはオレの方なのだと、いつまでも気づかずにこうしていてくれ。 この貧相な忌み子の体の中に。 あふれるくらい、永遠に注いでいてくれ。 ...End. |