プレゼント「躯に?プレゼント?」飛影の腹の傷を手当てしながら、蔵馬はいぶかしげに問う。 「違うって言ってるだろう!…あっ痛ぅ!」 穴が開き、肉がグズグズに吹き飛ばされた腹に蔵馬が手を突っ込んだ。 「っあ!お前わざと乱暴にしてないか!?」 「躯にやられた傷を手当てさせといて、躯へのプレゼントの相談してるんだから当然じゃないですか?」 「そんなんじゃない、借りを返すだけだ!」 「借りならオレにもいっぱいあるでしょうが」 まったくもう、と本気で怒っている風もなく、薬を塗り終え、蔵馬は包帯を手際よく巻いた。 「これでよし。花はどうせすぐには用意はできないから、泊まっていきなよ」 痛いでしょ?眠った方が早く治るから、と蔵馬はポンポンとベッドを叩いた。 ベッドを胡乱げに見つめる飛影に、蔵馬が笑う。 「今日は抱いたりしないよ。傷が開くからね」 翡翠の瞳が、いたずらっぽくきらめく。 誰もそんなこと言ってない!誰がやるか!と真っ赤になって喚く飛影を、蔵馬はひょいと抱き上げた。 「はいはい。おやすみ」 蔵馬の匂いのするやわらかなベッドに押し込まれると、ブツブツ文句を言いながらも、飛影はあっという間に眠りに落ちた。 ***
とろとろとした覚醒。ひどかった腹部の痛みはだいぶやわらぎ、鈍痛といえるくらいに治まっていた。 カサ、という紙をめくる音がする。 うっすらと目を開けると、蔵馬は床に寝そべり、本を読んでいた。 部屋は人間たちの使う「電気」がついている。 半分人間の体の蔵馬は、飛影ほどには夜目が利かない。とはいえ「電気」などなくても本は読めるはずだ。以前不審に思い、問うた飛影に蔵馬は苦笑して答えた。 習慣付けないとなんだ。 真っ暗闇で本読んだり、食事したりしてるのを人間に見られたらどうするの。すっごいまずいんだよそれって。 人間ぶりやがって。 睨む視線を感じたのか、蔵馬が振り向いた。 「起きたの?」 振り向いた拍子に黒髪が肩を滑り落ちる。 翡翠色の瞳がにっこり笑う。 「痛くない?もう少し眠りなよ」 ああでも、どうせ起きちゃったなら包帯替えようか、薬も切れちゃう頃だし、そう言いながら飛影の背に手を回す。 起きあがった飛影は、蔵馬の服を着せられている事に気付き仏頂面をする。 「…勝手に服を脱がすな」 はいはい、ごめんね、と、いかにも聞く耳持たずといった感じで、蔵馬は包帯を解いていく。 「よし。もう一眠りしなよ」 薬を足し、包帯を替え、パジャマの上だけ着せると、長すぎる袖を折ってやる。大きすぎる服が、馬鹿にされているようで面白くない。 「もういい。帰る」 「服、ないよ。洗っちゃった。これ着て帰る?」 こんなみっともない格好で帰れるか! 「…寝る」 ふて腐れてベッドに横になろうとしている飛影を蔵馬が止める。 「ちょっと待って。薬、薬」 蔵馬は小さな瓶から、親指ほどの大きさの、毒々しい青い実を取り出した。受け取ろうと出された飛影の手を無視し、蔵馬はパジャマの裾を捲り上げた。 「ちょ…ちょっと待て!何してんだお前!」 足を開かせようとしている蔵馬に、飛影は喚いた。 「え?ああ、これ座薬なんだ。お尻に入れるから力抜いて。すぐ済むよ」 冗談じゃない!絶対嫌だ!と暴れる飛影に 「だってさっきまでお腹に穴開いてたじゃない。胃が完全に再生していないのに飲めるわけないだろ。口から飲むなら飴みたいにずっと舐めてなきゃだけど?」 ひどい味だよこれ?と意地悪く言う。 飛影は蔵馬の手からその薬をもぎ取ると、口に放り込んだ。 まあ十秒くらいかな。 蔵馬の読み通り、きっちり十秒後に飛影は薬を吐き出した。 「うぐ…ぅえ…っ!」 吐きそうだ。 恐ろしいほど苦く、澱んだ沼のようなひどい味がした。 げほげほと噎せる飛影を抱きかかえて、蔵馬は背中をさすってやる。 「だから言ったでしょ?」 いい子にして。足を開いて力を抜いて。 「嫌だ!」 誰がそんな恥ずかしいこと! 噎せながらも睨む目。この赤い瞳には惚れ惚れする。 ベッドに落ちた、飛影の唾液にぬめる、青い実を拾う。 …滑りがよくなったなきっと。 「さっき寝てる間にも、入れたよ」 痛みが引いて、よく眠れたでしょう? …さっきも、入れただと? にっこり笑う蔵馬に、飛影は脱力した。 ***
薄い肉を開き、小さな穴に指を這わせた。マッサージするように緩く揉みほぐし、ぬめる青い実の先端を押し当てる。 「…ん…あ」 先端がほんの少し入っただけなのに穴はキュッと窄まり、実を体外へ押し出す。 「力入れちゃだめだってば」 蔵馬は苦笑する。 もう一度揉みほぐすと、指を二本入れて軽く開かせる。素早く青い実を押し込んだ。 「あっ、…んあっっ!」 小さな嬌声。 白い肌にピンクの穴がひくひく蠢めいていた。 中指を使って深く押し込むと、わざとゆっくり、あちこち押しながら指を抜く。 「あぁぅっ」 ビクッと痙攣した体を抱きしめて、意地悪く耳元で囁く。 「どうしたの?変な声出して」 「……ぁ…ぅ…気持ち悪い…」 さっきは眠っていたので分からなかったが、体内に押し込まれた固い実の異物感が気持ち悪い。ちょっと、痛いし。 …なのに、奇妙な快感もある。 まさか蔵馬にそんな事は言えず、飛影は顔をぷいと背けた。 「最初は固いからね。すぐに溶けるよ」 それに…気持ち悪そうには見えないけど? からかいを含んだ言葉に、下肢を見下ろす。 上だけを着せられた、大きすぎるパジャマを押し上げるように、勃ち上がりかけている陰茎を見て、飛影は真っ赤になった。 「したくなっちゃったんだ?」 「…ちがっ…違う!」 違うの?と蔵馬は笑うと、勃ち上がりかけている陰茎を服の上から緩く愛撫した。 「今日はだめだよ?傷が開いちゃうからね」 だめだよ、と言いながらも、手の動きはゆるゆると続けられたままだ。 「ん…ぁ」 とろりと瞳が潤む。 続きをねだるように、飛影の細い腕が背に回される。 「だーめ。今度またね」 愛撫を止めると、腕の中の小さな妖怪が不満そうにふくれっ面をした。背に回した腕に、力が込められる。 「どうして欲しいの?」 彼はそれを口に出しては言わない。 分かっているが、からかいたくてわざと聞く。 しばしの沈黙の後、飛影は背に回した腕にますます力を込める。 「お尻には入れられないけど…」 こっちだけでも、口でしてあげようか? ふくれっ面に微笑みかける。 白い頬が紅潮する。 赤い瞳がうろうろ泳ぐ。 どうするー? 答えは分かり切っている意地の悪い再度の問いに、真っ赤になった彼はかすかに頷いた。 ***
とろとろと溶ける実を温かな体内に包み込んで、飛影はぐっすり眠っている。起こさないように抱きかかえ、ベッドにもぐりこむ。くせのある黒髪を撫で、聞こえていないのは分かっているが耳元に囁く。 「躯にお礼をしなくちゃね。きれいな花束にしてあげるよ」 くすくす笑うと、蔵馬も目を閉じた。 ...End |