ペットホテル

「…またですかあ?せめて事前に了解取ってくれません?」
「仕方ないだろ。お前の所にしか預けられん」

オレにだけ?

それって、オレを一番信頼してるって事かな?
ちょっと、嬉しい。

なんて思ったら。

「お前が贅沢させるからだ」
「え?」
「人間界の食い物は魔界とは比べ物にならんからな」
「え?」
「贅沢になって、魔界の食い物は食わなくなった」
「え?」
「ベッドだの風呂だの甘やかすからだ。ここは居心地がいい」

オレの所に泊まるのはもう何度目だろう?
黒龍は既に飛影の腕から抜け出して肩に乗り、嬉しそうに尾っぽを振る。

「じゃあな。大事に扱え。逃がすなよ」

お決まりの言葉を残し、飛影は行ってしまう。

「ちょっ…」

膝の上にどすんと黒龍が乗る。
ビシビシビシビシ!と尾っぽを振る。

「イタタタタ!人の膝の上でトゲトゲの尾っぽ振らない!」

そう叱ると、膝からぴょんと降り、勝手知ったるキッチンの方へ行ってしまった。

やれやれ。

「飼い主込みで泊まりに来てよ…まったく…」

でも…

…人間界の食い物は魔界とは比べ物にならん…
…ベッドだの風呂だの甘やかすからだ。ここは居心地がいい…

つまり…ここは居心地のいい場所だって、飛影は認めるんだ。
そう気付いて、オレはまたちょっと、嬉しくなる。

しょうがない。
今夜もまた愛しい恋人のペットのために、ご飯を作るとしましょうか。




...End