The End of the Worldオレの方が元々はるかに力が強く、しかも相手は眠っていたのだ。勝負になどなりはしない。 壁が崩れるほどの力で叩きつけられた蔵馬の体は、ずるずると床に崩れ落ちた。 遅かれ早かれ、こうなる事はお互い分かっていたのに。 ***
三度目の目覚めもまた、二度目と同じく、暗くあたたかな場所だった。あたたかな、暗闇。 とろりとした羊水の中に、たゆたう自分の体。 それは獣の姿の、オレだ。 どうやら…またもやオレは生き延びたらしい… ふと、隣に気配を感じる。 もう一人、誰かいる。 だが…それはただの胎児で、何かが憑依している気配はなかった。 意識を持たぬ、ただの肉体。 …絶対にオレはお前の中に憑依する気はない… そうか。 まだあいつは、もう一人のオレは… この腹の中には、 いない。 ***
どうしてオレたちが二人に別れてしまったのかは分からない。たまたま飛影の宿した種が双子だったからだろうか。 …ここはあたたかくて、奇妙に心地いい。 もちろん完全な闇の中ではろくに見える物などないが、その臭いや感触から、飛影の体内はかなり傷み、内臓からも相当な出血をしている事はわかった。 飛影はひどい苦痛にも、声を上げずに耐えていた。 それがなんだか面白くなくて、オレは時々腹を蹴り上げてやる。 傷んだ内臓が抉れる程、強く。 その行為が飛影にどれほど凄まじい痛みを与えたかは、声を聞かなくても腹の中まで伝わってくる痙攣で、激しく嘔吐している様子で、オレにもよくわかっていた。 …なぜ? ここはオレの隠れ家だった家のどこかだろう。 辺りの気配を探る。 ここには飛影の他には誰もいない。 七転八倒し、苦痛に泣きわめいた所で誰に聞かれる心配もないというのに。 …苛々する。 母体が死ねば、もちろんオレも、もう一人の胎児も死ぬ事になる。飛影にダメージを与えるのは自滅行為だとは分かっていた。 だがそれでも、オレは飛影の腹を蹴り上げてやった。 記憶の糸を手繰り寄せる。 勝気な、気の強さのよく分かる口調。 小さいが俊敏でしなやかな体。 あの、生意気そうな大きな紅い瞳。 それらを、オレも愛していたはずなのに。 腹を力いっぱい蹴り上げる。 小さく聞こえたうめき声に、オレはうっとりと聞き入る。 意味を成さない声でもいい。 …飛影の声を、聞いていたかった。 ***
血の臭いとは違う、臭い。その嫌な腐臭を感じたのは、訪ねてきた幽助を飛影が追い返してから、一体何日目だったろう? …ああ。これは無理だな。 自分の命もかかってるというのに、オレは他人事のようにそう思った。 もう、駄目だ。 こいつは助からない。もう体が腐り始めている。 妖気もほとんど消えかかっている。 なのに、隣の胎児は相変わらず何の意識も持っていない。 どうやら絶対に憑依する気はないと言った、もう一人のオレの決意は固いらしい。 馬鹿馬鹿しい事だ。 どっちみち飛影は死ぬというのに。 身篭ってから百夜近い。 あまりに長すぎる苦痛に飛影の意識は混濁し、気を失う時間が増えている。 終わりの見えない苦痛は、体を蝕むだけではない。心を狂わせる。 きっともう時間の感覚もなくなっているだろう。 …こいつと一緒に死ぬのも、悪くないかもしれない。 ほんのつかの間、そんな考えが頭をかすめる。 その時、何日かぶりに飛影の声を聞いた。 「…蔵馬…」 その声はか細く、震えていた。 初めてやつが弱音を吐くのを、聞いた。 「蔵馬……早く…」 ***
まあ結局は、幽助とあの妹に助けられてオレたちはこうして生きている。まったくあの氷女ときたら。肝の据わった女だ。 「蔵馬……早く…」 あの時の震える声。 しかし、飛影がまともな事を喋ったのを聞いたのは、あれが最後だ。 何日かぶりに戻ったこの家で、オレは長椅子に腰掛け、珍しく飛影を膝に抱いていた。 オレの銀色の髪を指に巻き付けては、さらさらと零す。 膝の上の飛影は、それを何度も何度も繰り返し、銀色の流れが滑り落ちる様を飽きる事なく楽しんでいる。 …馬鹿なやつだ。 その馬鹿を、もう一人の蔵馬は、まるでこの世で一番綺麗なものを見るような目で、じっと見つめていた。 母親そっくりの、真っ赤な瞳で。 蔵馬はオレを、妖狐、と呼ぶ。 おかしな話だ。 それは種族の名前であって、オレの名前じゃない。 第一、蔵馬は元々オレの名だ。 それを横取りしたのはやつなのに。 だが… 「…くらま」 飛影がオレの胸元に顔を埋める。 こいつは、オレたち二人の事を同じ名で呼ぶ。 両方を“蔵馬”だと理解しての事なのか、まるっきり馬鹿だからなのか、分からないが。 こいつが死んだらどうするつもりだ? 以前、一度だけ蔵馬にそう尋ねた事がある。 蔵馬は意味が分からないとでもいうように、ポカンとオレを見た。 「……死んだら?…飛影が?」 「ああ。どうする気だ?」 こいつまで馬鹿になったのだろうか。 まったく嫌になる。 だが、返された返事は意外なものだった。 「どうもこうもない。何も問題なんかない」 自分の傍らで眠る飛影を見つめ、蔵馬は幸せそうに、言った。 「飛影が死ぬ時は…」 紅い瞳が、冴え冴えと輝く。 「オレが死ぬ時でもある。…だから、何も問題ない」 そう言って、花が咲くような笑みを蔵馬は浮かべた。 ***
魔界では死んだ事になってはいるだろうが、オレたちは三人とも、名も顔も知れ過ぎている。オレと蔵馬は問題ない。自分の身は自分で守れる。 だが… 今日も飛影は、蔵馬から薬と妖気を与えられ、服を着せてもらい、居心地良さそうに膝の上におさまっている。 とはいえ、歩く事さえできなくなった今の飛影でさえ、かつての恨みから、もしくはただ名を上げるためだけに、首を切り落としたいと望む輩は少なくないだろう。 外に出るのは危険すぎるという事は理解できたが、かといってこの森から一歩も出ない二人の生活が、オレには理解できなかった。 テーブルの上には蔵馬の手作りのスープやパンが並び、取ってきたばかりの果物は、飛影に食べさせやすいようにと小さく刻まれていた。 その傍らの飾り気のない白いティーポットからは、いい香りの茶がふわりと湯気を立てている。 二人の生活をそのまま表したかのように穏やかで、やわらかな、食事。 穏やかな水面にさざ波をたてるように、何もかもをぶち壊してやりたくなる。 その衝動を抑えるために、オレは一人、外の世界を味わうために森から飛び出す日々だった。 …一体、いつになったら終わるのだろう。この時間は。 オレはずっとそう考えていた。 だが、あの光景を見たときに思い知らされた。 …終わりはないのだと。 永劫にも等しく、この時間は、続くのだと。 ***
かつて集めた山ほどの財宝と、自分たちで好きに育てることのできる植物とで、オレたち三人は食うには困らない。オレはただの暇つぶしと気晴らしに、盗みをし、適当な者を抱いた。 男でも、女でも、構わない。見目が美しく、生命力に満ちたしなやかな肉体を持つ者なら誰でも良かった。その場限りの激しく淫らな性交は、いかにも魔界らしく刹那的だ。 まれに、オレがかつての妖狐蔵馬だと気付く者もいたが、そんな時は、容赦なく殺しも楽しんだ。 蔵馬が飛影を抱いていることを知ったときは驚いたものだ。 あんな貧弱な体の不具者を抱いて何が楽しいんだか。 壊れやすい宝物を扱うような、ひどく繊細な性交を、やつらは行っていた。 たっぷりと奥まで油を塗り込まれ、揉み解されたそこに、蔵馬はゆっくりと丁寧な挿入を行う。 小さな穴を押し開かれる感触に、飛影が大きく身を震わせた。 交尾中の小動物を思わせる、キュゥ、という小さな声が上がる。 気の強い瞳を揺らめかせ、快楽と同じくらい羞恥を感じて頬を染めていた、かつての飛影はもうどこにもいない。 今はただただ素直に、快楽を享受し、悦びの声を上げている。 動かせない両足がもどかしいらしく、細い両腕だけで必死に蔵馬にしがみつき、絶え間なく喘いで腰を揺らめかす、その姿。 おまけに。 二人は交わりの間、ずっと互いを見つめあっていた。 まるで、たった今初めて、運命の相手を見つけたかのように。 その信じられない僥倖を、噛みしめているかのように。 そっくり同じ色をした二対の紅い瞳が絡み合い、互いの海に溺れて行く。 「…飛影…愛してる…愛してるよ…」 空っぽの頭に何を囁いても無駄だろうに。蔵馬はいつだって相手がちゃんと理解しているかのように振るまっていた。 ピンと勃ち上がった飛影のそれが白液を噴き出させるのと同時に、蔵馬は自身を素早く引き抜き、ベッドの側に置いてあった布に自身をくるみ、放出する。 蔵馬は決して飛影の中に出すことはしなかった。 万が一にでも、もう一度身篭るようなはめになったら、今度こそ間違いなく飛影は死ぬ事になるだろう。 …馬鹿馬鹿しい。 ここでの生活も、やつらの性交も。 何もかもが、心底、馬鹿馬鹿しかった。 今思えば、オレは森を出るべきだったのだ。 永久に。 ***
その晩、自室で目を覚ましたときは、もう真夜中だった。空高く登る三つの月は二つが満月、一つは下弦の月で、部屋をぼんやり照らしていた。 空腹を感じて部屋を出たオレの目に、それが飛び込んできたのだ。 扉の開けられたままの二人の寝室。 月は同じように部屋を照らしてはいたが、この部屋の方が窓がずっと大きいために、月明かりもたっぷり降り注いでいた。 その寝室のベッドで、蔵馬は眠っていた。 そして隣では目を覚ましている飛影が、片ひじをついて半身を起こしていた。 瞬きすらも忘れたかのように、飛影はじっと蔵馬に見入る。 白い手は眠る蔵馬の髪を撫で、頬をすべり、唇をなぞっていた。 何がそれほどまでにオレを逆上させたのか、分からない。 いや、それは嘘だ。 本当はよく分かっている。 飛影が小さく長い、ため息をついたのだ。 それにオレは逆上した。 …その吐息と紅い瞳には、満足と、絶対的なまでの幸福とが、溢れていた。 望むものすべてを手に入れた者だけに許された、 甘く深い、満ち足りた吐息。 ひどく満ち足りた、瞳。 ***
部屋に飛び込み、蔵馬を叩きつけた次の瞬間にはもう、オレは意味不明な声を上げる飛影をベッドに組み敷き、その白い首に手をかけていた。スピード、妖力、腕力。 どれもオレの方がずっと優れている。それは蔵馬にもよくわかっているはずだ。 「やめ…っ」 よろめきながらも反撃に出ようとした蔵馬に、オレは首にかけた手に力を込めてやる。 「っぐ…かはっ!!」 飛影のその声に、蔵馬はこちらに放とうとしていた植物を止めた。 「よせ!…飛影に何を…」 「…なんだと思う?この首へし折られたくなけりゃ、そこでじっとしてな」 蔵馬は凄みのある視線を寄越したが、オレが本気であることは理解し、何もできないでいた。 「ぁ…くらま……」 飛影はオレたち二人を交互に見遣り、困惑した声を出す。 オレは平手でその白い頬を打つ。 パァン!という小気味よい音。 十分手加減はしたつもりだったが、オレは強すぎて、今の飛影は弱すぎた。 がくんと頭が傾き、飛影の唇の端からは一筋の血が滴った。 蔵馬の怒りの妖気が部屋中に満ちるのを感じたが、知った事ではない。 召喚した蔦で蔵馬を縛り上げ、床に転がした。 「くら…ま…!…」 「蔵馬?どっちを呼んでいるんですかね?母上?」 オレはそう嘲ると、飛影の寝巻きを引き裂いた。 久しぶりに見るその裸体は、腹部から陰部のすぐ上まで生々しい傷跡が走り、萎えた両足は驚くほど細く貧弱だった。 こんな体から自分が産まれたとは考えられない。 「くら…」 「黙れ!」 オレはもう一度平手で頬を打ち、滲む血もそのままに、乱暴に口付けた。 大きく足を開かせ、陰部をまさぐる。 「ぁぅ!ぅぅ…ぁ、ぐぅ!」 先ほどまでの行為でまだ湿っている陰部をきつく握る。 飛影は苦痛とも快感ともつかない声を漏らしたが、オレは手を止めはしない。小さな体にのしかかり、尻の奥へ指を滑らせる。 その拍子に未だ癒えない腹の傷跡に体重がかかったらしく、飛影がうめき声を漏らした。 蔵馬を縛り上げている蔦は、今オレが召喚できる植物の中でも最強の物だ。絶対に切れはしない。 それを引き千切ろうと無駄な努力をしているのを横目で笑い、オレは飛影の穴に指を捩じ込んだ。 「ぁ!うっあ!」 腹部と尻の、両方の痛みから、飛影が悲鳴を上げる。 大切に大切に、宝物のように扱われていた日々に、こんな痛みを与えられたことなどなかったのだろう。 適当に指でかき回しただけのそこに、オレは自分を宛てがい、力任せに押し入った。 熱く濡れる、狭いそこ。 きつい入口が嫌な音を立てて裂け、飛影の内部が、大きく収縮した。 一瞬の、静寂。 部屋は月明かりだけに満たされ、当然響くはずの絶叫は聞こえなかった。 気絶したのかと覗き込んだその瞳は、大きく開かれ、じっとこちらを見つめていた。 オレを飲み込んだ穴は大きく裂けて血を流していたし、ぶるぶると痙攣する腿が苦痛を如実に表しているというのに。 オレを見つめ、大きくゆっくり息を吐く。 「……くらま…く、ら…」 驚いた事に、飛影は目を閉じ、腰を揺らめかせ始めた。 ゆらゆらと前後に動く度に接合箇所の裂け目が広がり、水音を立てた。 「あ…ああ、うぅっぅ…くら…っま」 オレはシーツに広がっていく赤い染みから目を離せずに硬直していた。 血は、生命だ。 赤く染まるシーツとは反対に、飛影の顔は腹部の痛みも手伝って、みるみる血の気を失い、白くなる。 「っ、もういい、よせ…」 オレは飛影を自分の体から引き離そうとする。 だが、飛影は両手をオレの髪に絡め、いやいやをするように頭を振る。 たいした力はない。 幼子なみの力すらないというのに、どうして振り解くことができない!? こんな稚拙な性交に、このオレが翻弄されている。 血を流す穴は痛いほどにオレを締め付け、高みに追い上げる。 「ぅ…ふ、ぁ…ぁぁ…あ!! ん!」 一際大きく、白い喉が反る。 まずい…! 壁際でバン!!という凄まじい妖気の放出音が響いた。 オレがどうにか爆発を抑えて腰を引いたのと、蔵馬が飛影を後ろから抱えて引き剥がしたのは同時だった。 オレの放った熱い流れは、飛影の腹を、腿を、白く汚した。 蔵馬は蒼白で、乱れた呼吸をしている。 「よく…切ったな」 飛影を抱き締め、肩で息をしている、オレの片割れ。 あの蔦は蔵馬の妖力では解くことはできないはずなのに。 だが限界だったのだろう。蔵馬は飛影を抱えたまま、ベッドにぐらりと倒れ込んだ。 飛影は気を失った蔵馬の頭を仰向けの自分の胸の上に乗せたまま、何が起こったかわからないらしく目を瞬かせる。 それでも蔵馬を放すまいと、右腕はしっかりとやつを抱き寄せた。 その反対側、飛影の左側に、オレは力の抜けた体でどさりと横たわる。 …疲れた。 なぜだろう。ひどく、疲れた。 たった一度の性交とは思えない程、オレは消耗していた。 ……疲れたのは、体ではないのかもしれない。 ゆっくりと、飛影の顔がこちらを向く。 てっきり、怯えきった色を見せるだろうと思っていたその瞳は、ついさっきオレを逆上させたあの瞳と同じだった。 満ち足りた、その紅い瞳。 望んだものはすべて手に入れいている者の、その瞳。 飛影は自分の腹にかけられたオレの精液を指先で掬い、まじまじと眺めると、ぺろりと舐めた。 不味い、とでもいうように、オレの方を向いたまま、赤い舌を小さく出す。 「…オレは……」 まるでオレの言葉の続きを待つかのように、飛影が首を傾げた。 飛影は蔵馬を右腕で抱いたまま、左腕でオレの頭を抱き、同じように自分の胸元に引き寄せた。 オレたちは二人とも、飛影の胸に頭を乗せている。 弱い力。 小さな体。 狭い胸の中で、鼻先にはもう一人の、蔵馬。 全力を使ったせいかぐたりとしてはいたが、月明かりに映えるその顔は綺麗だった。 「……お前は欲張りだな。オレたちが…両方欲しいのか?」 飛影にそう聞いてみる。 言葉が通じない事は分かっている。 でも、語りかけずにはいられなかった。 飛影の手が、オレの髪を撫でる。 「…ばーか。…触るな…」 我ながら子供じみた悪態をつく。 目の前が、ぼんやりと霞む。 「飛影……お前、馬鹿のふりをしてるんじゃないのか?」 飛影は何も答えない。 紅い瞳はこちらをじっと見つめたままで。 手は、オレの髪を撫で続けている。 「……本当は…何もかも…分かってるんじゃないのか?」 自分の頬を伝い落ちたのが液体がなんなのかなんて、オレは認められない。 だが、その一瞬後に響いた、冷たく硬い、音。 冷たいシーツの上を転がり、床に落ちたのは… 氷泪石。 …オレは一体どうしたいのだろう。 どこに行きたいのだろう。 望む場所はどこなのだろう。 ここではない場所? 今ではない時間? それとも…オレは…ここに…… 「…オレは……いつか、お前を殺す」 オレを見つめる飛影に向かって、オレは囁いた。 「…その時は、こいつも一緒に殺してお前の隣に埋めてやるさ」 お前が寂しくないように、な。 オレはそう言って意識のない蔵馬を小突いた。 「分かったか?オレは必ずお前を殺すからな」 たった今、氷泪石を造り出した金色の瞳で、 紅い瞳を真っ直ぐ射る。 だが、その瞳は相変わらず満ち足りていて、 飛影はただ小さく笑った。 その笑みが意味するのは、 お前にそれができるのか?という嘲りなのか、 お前の好きにして構わない、という許しなのか。 ………本当に、オレにそれができるのだろうか? 飛影はもう一度小さく笑うと、 両腕でオレたち二人をぎゅっと抱き締めた。 月が陰り、部屋に闇が流れ込む。 どこかずっと遠くで、 世界が閉じる 音がした。 ...End |