このまま「蔵馬」自分を呼ぶ、その声。 背が低いために、いつだって相手を見上げるばかりの、赤い瞳。 訪ねて行くのは自分ばかりの蔵馬にとって、それはなんだか新鮮だった。 ***
「…貴方とここで会うなんて、変な感じ」癌陀羅の一室。蔵馬に与えられている部屋。 机の上には、書類が整然と並べられていた。 トーナメントの敗者であるはずの蔵馬がパトロールを免除されているのは、時折魔界に滞在し、こうした面倒な書類仕事を引き受けているためだった。 肉体労働をしないかわりに、いわば頭脳労働の提供というわけだ。 「どうして、ここへ?」 躯の使いだ、という、素っ気ない返事。 躯の好みは飛影のようなタイプではない。どちらかといえば雷禅のような男だということはもう知ってはいる蔵馬だったが、それでも躯の名が飛影の口から出ると、面白くない。 「ふーん。躯の代理で来たんだ」 「…ああ。黄泉に直接の届けだったからな」 下っ端を黄泉の使いに出すのはどうかと躯は思ったんだろ。 そう言って、飛影は肩をすくめてみせた。 「それにしたって。たかが届け物に。筆頭戦士様が直々におつかいってわけ?」 わざと子供扱いしてみたが、めずらしく飛影は挑発に乗らない。 さして面白いもののあるわけでもない癌陀羅の部屋を、きょろきょろ眺める。 「たいして面白くもないでしょ」 ここはオレの部屋だけど、黄泉に頼まれた仕事がある時しか使わないし。まあ事務室みたいなもんだよ。 百足みたいに動くわけでもないからね。 大きな机、食事用の小さなテーブルと椅子。ごく普通のベッド。 それらを指して、蔵馬は言う。 「…つまらんな」 帰る、といつもなら言うだろう飛影は、意外にも帰るそぶりは見せずに、一脚しかない椅子に腰掛けた。 椅子を跨ぐように座り、脱いだコートを引っかけた背もたれに肘をつき、無言で蔵馬を見つめる。 人間界で、魔界で、二人は逢瀬を続けている。 久しぶりに会った、というわけでもない。 「飛影…?」 飛影のくっきりと赤い瞳。 その瞳に見つめられるといつだって、蔵馬は吸い込まれそうな錯覚をおぼえる。 薄く形のいい唇に、蔵馬はそっと唇を重ねた。 驚いたことに、飛影はふっと目を閉じた。 小さく口を開け、侵入してきた舌を受け入れる。 舌を絡め、唇を濡らし、キスを交わす。 いつの間にかコートは床に落ち、飛影は背もたれを両手でつかみ、椅子の上で膝立ちになっている。 「…ん、あ……」 唇から首筋へとキスを落としていた蔵馬は、黒いタンクトップをめくり上げ、胸元にも口づける。 短い黒髪を指で梳きながら、小さなそれを口に含んだ。 舌で転がし、軽く歯を立てる。 薄赤いそこが尖り、色を変えるのを見ると、蔵馬の下肢には、どくんと震えが走る。 わざと左側だけを責めているのに耐え切れなくなったのか、飛影の右手が蔵馬の長い髪を引く。 「あ!くら…んん…っあっ!!」 その声に、蔵馬はハッと我に返った。 ここは、魔界の根城でも、人間界のマンションでもない。 全ての会話が主に丸聞こえの城、黄泉の癌陀羅にいるのだ。 「ごめん…つい夢中になって」 タンクトップは首元にぐちゃぐちゃと重なり、その下には色づいた肌と、ぷつんと主張する乳首。 いつもと同じ黒いズボンは股間部分にくっきりと膨らみをみせている。 「蔵馬…」 「わかってます。ごめんなさい。こんな所で」 貴方といると、まるでヤリたい盛りのガキみたいだよね、オレ。 苦笑しながらタンクトップを下ろそうとした蔵馬の手が、止められる。 「飛影?」 「…いいぞ」 「え…?」 細いベルトをかちゃりと外し、飛影は片足だけ、ズボンから引き抜いた。 しなやかに筋肉のついた足を、背もたれに、かける。 白いふくらはぎ、白い股、その延長の場所は、ほんのり赤みを帯びている。 勃ち上がった性器は、ふるふる揺れていた。 その光景に、蔵馬は思わずごくりとのどを鳴らした。 「…このまま…してもいいぞ」 薄く笑い、傲慢な許しを、飛影は与える。 焦らされていることに抗議をするかのように、先端から透明の滴がぽたりと椅子に落ちた。 ***
二人分の服が、打ち捨てられたように床に散らばっている。「ひ、あ!ああ、あ、あ」 自分の股間に顔を埋める蔵馬の髪を、飛影は指に巻き付ける。 もっと強くとねだるようにその手は、蔵馬の頭を押し付ける。 「ん、ふ、ああぁ…くら…っ」 「そんなに押し付けちゃ、息できないよ…」 クスクス笑いながら、カリの部分をねっとりと舐め上げ、小さな穴を舌先でつつく。 途端に口の中に広がったあたたかな液体を、蔵馬は絞り取るように、吸い取った。 「アアアアア!ア!ああ…っああ!!」 波打つ下腹が、飛影の快感を如実に伝える。 大きく広げさせていた両足をさらに大きく、膝が肩につくほど広げる。 前への快感にヒクつく穴を、蔵馬はペロリと舐めた。 「アアア!んん!あ」 「おっきな声出して…外に聞こえちゃうよ?」 どこからともなく取り出した実を蔵馬は口に含み、かみ砕く。 ねっとりと油分を含んだその液体を、綺麗に皺の寄った穴に口づけ、ぐちゅっと流し込む。 「うあっ、あ、アアアアアン!!」 きちんと奥まで行き渡るよう、息を吹き込むように、強く流し込む。 「んんーー!! ああ、ああああ、くら、ま…くらま…っ」 「ほらほら、こぼさないで…」 唇をはなしたそこからは、ぶちゅぶちゅと透明な液体が流れ出す。 それを長い指ですくい上げ、蔵馬は中を解してやる。 「ひあっ、あ、うあ、くら…!」 一本、二本。 三本目の指さえも、穴は嬉しそうに飲み込んだ。 「もう…もう、あ、ああ、蔵馬!」 切羽詰まった、濡れた声で自分の名を叫ばれては、蔵馬の方も限界だ。 あたたかな体内を探っていた指先を勢いよく引き抜き、一糸纏わぬ飛影の両足を抱え上げた。 物欲しそうに口を開けている穴に硬い先端を押し当て、まさに突き込もうとしたその瞬間。 「くら…ま…オレ、を…」 ……好き、か? 切れ切れに、飛影が尋ねる。 分かり切った答えを今さらなぜといぶかしみながら、蔵馬はずぶりと肉棒を突き刺した。 「うっ…あ、ああああああああっ!!」 すでに乱れたシーツの上で、蔵馬は激しく腰を使う。 「ああ!ああ!んんーーーーっ!!」 「何、を…今さら…オレは…」 「ヒアッ!うあ!あ!あ!あ!」 いっぱいに膨らんだ蔵馬を受け入れて、穴は皺一つなくまあるく広がる。 充血して痛々しくも見えるというのに、穴は自らの体内からも淫液を流し始めていた。 「あっあっあっ!あ!あ!んああ!」 「オレは…貴方を……」 飛影の体内は信じられないほど熱く、素晴らしい締めつけで蔵馬を包む。 とんでもなくキツイ入口の奥では、ぐにぐにと力強く蠢く、濡れた直腸が迎えてくれる。 「んん…ん…ぅ、ん、あ…あっ!あっ!あっ!」 「貴方をね…」 自分と蔵馬の腹に挟まれ、飛影の陰茎はもうすでに硬く勃ち上がっている。 浅く浅く深く、を繰り返していた抜き差しが、どんどん奥へ、どんどん深くなるにつれ、飛影の喘ぎ声は大きくなり艶を帯びる。 「蔵馬…!くらま!ああ!ああ!」 「……貴方を…愛してるよ…」 誰より何より、愛してる。 甘い言葉と裏腹に、直腸を穿つ蔵馬の動きは、飛影には耐えられないほど強く激しく勢いを増す。 「…愛し、て、る…っ!!」 「うっあ、ああああああーーーっ!! やあ…っ」 火傷しそうに熱い流れを中に受け止め、小さな体は大きくしなった。 ***
ぐちゃぐちゃによれ、乾いた液体や乾いていない液体で汚れたシーツの上に、二人は荒い呼吸のまま、横たわる。一度も抜かぬままに四つん這いにし、膝の上に抱え上げ、また仰向けに押し倒し、いったい何時間経ったのだろうかと、蔵馬は机に山と積まれた書類をぼんやり眺める。 「…仕事する気力、なくなっちゃったよ…」 力なく笑う蔵馬に、こちらも疲れ切った、けれども満足げな顔で、飛影は笑った。 「…貴様の仕事なんぞ、知るか」 「でしょうねえ」 ベッドで寝返りをうっただけで、飛影の奥からは、白濁した液がだらだらと流れ出し尻を濡らす。それを面倒くさそうにシーツで拭うと、飛影はさっと立ち上る。 あふれ出る精液は拭っても拭っても無駄だと悟ったのか舌打ちをし、そのまま服を身に着けた。 「ひどいなあ。帰っちゃうの?」 オレをこんなにしておいて、躯の所に帰っちゃうの? まんざら冗談でもなく、蔵馬は甘言とも恨み言ともつかぬ言葉を口にした。 「ああ、帰る」 いつになく素直に大声を上げていた飛影の声は、少しかすれていた。 「声、かすれてる」 貴方があんなに声を上げるなんて、めずらしい。 知ってる?黄泉の耳は、地獄耳だよ。きっと黄泉には、ぜーんぶ聞こえちゃったよ? からかうような言葉に、飛影が顔を上げた。 「…あいつが聞いていることは、知っている」 「え…?じゃあ、なんで…」 そうだ、飛影は他人に、しかも敵方ともいえる黄泉にそんな痴態を聞かれてよしとするような性格ではない。 すいっと身をかがめると、蔵馬の耳元に、ほとんど口づけんばかりに近付いて、飛影は囁いた。 「…お前が誰のものか、あいつに教えてやるためだ」 バサリとコートを羽織り、生意気な笑みで魅せると、飛影は風のように部屋を去った。 ...End. |
「miao」のM様に素敵なイラスト描いていただきました!!! もうこのエロかわ生意気細腰艶ひえときたら!(//Ф∀Ф///) 病気療養中なのに無理なお願いをしてしまいました…(^^;)ゴメンナサイ うちにお嫁にきたからには蔵馬さんとエッチに過ごしてもらいましょう! M屋さんありがとー!!! 2012.11.23 実和子 |