It's Too Late...1

だいたいね、厄介事ってのは向こうから近づいてくるんじゃない、お前の方から厄介事に近づいていってるんだよ。

そう言ってオレの頭をゲンコツで一撃したオフクロの言葉を思い出す。
子供の頃の話だ。あれはいくつの時だっただろう?
あれからずいぶん経ったのに、相変わらずオレはまたいらない所に首を突っ込んで、困った目にあっている。

ホテルの部屋はどれも同じようなドアだった。だから間違えた。
ベッドはきちんと整えられ、荷物も部屋の片隅にちゃんと片付けられている。ということは、もちろんオレの部屋じゃあない。
仲間うちでちゃんと部屋を片付けるのは一人しかいない。蔵馬の部屋だ。

隣の部屋と間違えた。鍵をかけないなんてあいつらしくもないな。
そう気付いた時点でさっさと自分の部屋に戻ればこんな目には合わなかったのに。
狭苦しいクローゼットの中で気配を殺すのに必死にならなくても済んだのに。

くだらない子供じみたいたずらを思いつき、クローゼットに隠れて五分と経たないうちに、蔵馬は部屋に戻ってきた。正確には、蔵馬と飛影が。

「あれ?鍵…。だめじゃない」

だめじゃない、という言葉をかけられた相手は、それを無視してベッドにひっくり返った。

「…鍵?そんなもの知らん」
「まったくもう。ベッドに靴であがるのもだめだって言ってるでしょう」

そう言いながらも蔵馬は怒っている様子もなく、靴を脱がせる。
飛影はされるがままにぼんやりと天井を見ている。
蔵馬は脱がせた靴をベッドのそばにきちんと置き、今度はコートを脱がせてやる。

どこまで甘やかすんだ。まったく蔵馬は世話焼きだな、とオレは暗がりでニヤッとする。
飛影も飛影で、まるで当然のことのように脱がされるままになっている。

ふうん。いつもツンケンしてるくせに、蔵馬には態度違うんだな。

いたずらついでに、されるがままの飛影をからかってやろうと扉に手をかけた途端。

カチャリ、という軽い金属音。
反射的に扉から手を離す。

わずかなすき間から見える光景に、目を疑う。

まるで靴を脱がせた延長のように蔵馬は飛影のベルトを外し、するりとズボンを脱がせた。
***
「ッん…、ぁ……ッ!」

荒い息の合間から、小さく擦れた声がもれる。

唇に、首筋に、胸に、腹に。
蔵馬は味わうようにキスを落としていく。

え?え?
あいつら何を…。

ここまで見てもまだオレは何かの遊びかと考えようとしていた。
けど次の瞬間、蔵馬は飛影の足を大きく開かせ、その狭間に顔を埋めた。

しょうもないエロ雑誌でしか見た事のない行為に、自分がされてるわけでもないのに心臓が跳ね上がる。

「っあ!い…や、あ…ぅあ」

嫌がってる…?
飛影は首を嫌々するように振り、力なく蔵馬の頭を押しのけようとする。

蔵馬はクスクス笑うと、より深く飛影をくわえ込んだ。
ピチャピチャと濡れた音が繰り返される。

「あ、う、ァアア!」

甲高い声。
飛影の背がぐっと反る。
それがイッた瞬間だという事はオレにもわかった。

…そして、どうやら飛影もこの行為を嫌がっているわけではないらしい事も。
次のページへ