お昼寝するネコひえ

白い大きなクッションソファ。
ダイニングキッチンの、陽射しがたっぷりさしこむ窓辺。
天気のいい日の庭のハンモック。
午後二時の、日光でふっくら暖まったベッド。

だいたいその四ヶ所が飛影のお昼寝スポット、だったのだが。

「飛影ー。どこー?お茶淹れたよー」

仕事がひと区切りついた午後三時。
飼い主は飼いネコを探し、家の中を一回りするのが最近の日課だ。
***
気持ちのいい、過ごしやすい季節になった。
人間にとっても、猫やネコ族にとっても、春は好ましい季節だ。

しかし、どこで眠っても暖かい季節になった途端、飼いネコはどこででも昼寝をするようになってしまい、蔵馬はその度にさして広いわけではない家中を、探し回る。
***
「…どうしてこんな所で寝るの…?」

蔵馬は飛影を起こさないよう小さく呟く。

庭に置きっ放しだった、洗濯物用の大きなカゴの中で飛影は眠っていた。
籐でできたカゴはかなり大きいし、飛影はそうとう小柄ではあるが、だからってこのカゴによく入れるものだと蔵馬は感心する。

まあるく、本当にまるーくなって、飛影はカゴにギュウギュウに納まって、眠っていた。
しっぽだけをカゴの外にタランと出し、とても気持ち良さそうに。

ネコって、本当に狭いところが好きなんだねえ。
蔵馬のそんな言葉も聞こえてないらしく、飛影はすうすう眠っている。

小さな呼吸に合わせ、小さな体が上下する。

日溜まりの緑の庭。
茶色い籐カゴ。
中で眠る黒ネコ。
ときどき、黒い耳がぴく、と動く。
ときどき、にゃ、などと寝言を呟く、半開きの小さな口。

すう、すう。
小さな呼吸に合わせ、小さな体は、規則正しく上下する。

お茶が冷めるのもすっかり忘れ、蔵馬はその幸せな風景を堪能したのだった。


...End.