かぼちゃ

「飛影ー!蔵馬さーん!」

制服姿の少女の声が、夏の夕暮れの空気をふるわせる。

日が暮れてもまだ暑い日だというのに、少女が声をかけた、同じく制服姿の二人は、手をつないで歩いていた。

「二人とも今帰り?暑いのに仲いいわね」

お熱いことで。
からかうような雪菜の言葉に、飛影が慌てて手を振りほどく。

「放さなくてもいいじゃない。傷付くなあ」
「うるさい!」
「照れ屋ねー。本当に私の姉なのかしら?」
「照れ屋なとこもかわいいんだけどねえ」
「よっく言うわ。あ、ねえ、蔵馬さんアイス買って!」

「俺は先に行くからな!」

赤くなった飛影は一人で先をスタスタ歩いて行く。
***
「もうすぐ晩ご飯なのにどうして買い食いするの!」

二人の手にアイスの棒があるのを見て、氷菜は眉を吊り上げる。

「買い食いって、死語よママ」
「雪菜!無駄遣いばっかりして」
「買ってない。買ってもらったの」
「屁理屈言うんじゃないの!」

まったくあんたたちときたら。
そう言って溜め息をつく母の目は、愛情に満ちている。

「もうすぐお魚が焼けるから。二人ともさっさとお風呂入ってらっしゃい」
「はーい。飛影、久しぶりに一緒に入ろ!」
***
「何、そのパンツ!」
「なんだその下着…」

脱衣所で、双子は互いの下着に目を丸くする。

「かぼちゃパンツ〜?何それ。蔵馬さんの趣味?」
「ちがっ!違う!」
「しかも水玉だしー。キャミもお揃いだしー。蔵馬さんも好きね〜」
「違うって言ってるだろう!お前こそなんだそれ!」

制服の下は水色の総レースにスワロフスキーをあしらった下着、という妹の姿に、飛影は赤くなる。

「いいでしょー?買ってもらっちゃった」
「誰に!?」
「ひみつー」
「秘密!? お前…!」

姉妹の入浴はいつだって賑やかだ。
お湯をたっぷり泡立て派手に飛び込んだ雪菜は、髪を洗っている飛影を見て、ニヤリと笑う。

「…飛影、おっぱい小さーい」
「うるさい!」
「双子なのにねえ。一緒の物食べてるのにねえ」
「悪かったな!」

さしずめ姉はBカップ。
妹はDカップというところだろうか。

飛影が髪を流すために目をつむった隙に、雪菜はバスタブから身を乗り出し、姉の胸を後ろから両手で包む。

「わ!! バカ!何してんだ!」
「弾力は悪くないのよね…という事は、足りないのよ」

雪菜は確かめるように、胸を上下に撫でる。

「あ!やめろって!」
「揉み足りないのよ。ちゃんとセックスの時揉んでもらってる?」
「はあ!? っ痛って!!」

シャンプーが目に入ったらしい。
あわあわとシャワーで流す飛影に、雪菜がしたり顔で頷く。

「どーせ飛影恥ずかしがってあんまり揉ませないんでしょ?ダメよ」

絶対蔵馬さん上手いと思うんだけどな。

こう、ね、下から上に…。
あ、ちゃんと強弱つけるのよ!

「いい加減にしろ!」
「冷たい!何すんのよもー!」

シャワーのコックを水にし、飛影が反撃に出る。

「だいたいお前はなー!」
「なによもう。人が親切にー!」

二人の大騒ぎはいつも通り、氷菜の雷が落ちるまで続いた。